【8月15日 AFP】鉄工職人のアントン・ザイカさん(32)は、バズーカ砲とベレッタの銃の区別はできないが、職人ならではのやり方で自国ウクライナの戦争に貢献している。

 腕利きの職人であるザイカさんは、欧州の裕福な顧客に金属製家具を販売するビジネスで、質素ながらも成功を収めていた。だが5か月前に始まった戦争で、仕事の優先順位が変わった。

 現在、製作しているのは北東部の前線都市スムイ(Sumy)でロシアの侵攻と戦う領土防衛隊を守る対戦車障害物と、塹壕(ざんごう)で暖を取れる特製ストーブで、これらを無料で提供している。さらに中古車を買い上げ、装甲兵員輸送車に改造することも始めた。

 人口26万人のスムイは、ロシア国境まで25キロしか離れていない。戦争が始まって以降、街からは警官がいなくなり、兵士も数えるほどしかいないとザイカさんは言う。市民が武器を取るようになる中、「私は武器を使うのがうまくないので、自分が得意なことで手伝っているのです」と話した。

 戦時下でザイカさんが製作したストーブは500台を超える。防衛隊だけでなく、防空壕(ごう)で暮らす人々や、砲撃でガス供給が止まった近隣の村や町の住民にも提供されている。

 やがて一般市民もザイカさんの活動に参加し始め、塹壕や避難所で使えそうな資材を見つけては運び込むようになった。

■「冬の到来」

 ザイカさんはある愛国心あふれる協力者について話した。この男性は20キロほどある溶接棒の束を担ぎ、雪の中、6キロの道のりを歩いて運び込んだ。

 またインスタグラム(Instagram)を介して集まった寄付金では、2000年代に製造されたスズキ(Suzuki)の7人乗りSUV「XL7」を購入し、軍事用に改造して志願兵部隊に提供することができた。

「フレームとエンジン部分をプロテクターで補強し、フロントバンパー、ラジエーター、トランクも強化して、窓には金網を装着しました」とザイカさんは説明。これまでに10台の車を改造した。

「やめるつもりはありません。間もなく冬が来るので、もっとたくさんストーブを作ることが必要になるでしょう」と話すザイカさん。「車についてももっと必要だと言ってくれば、手助けするつもりです」 (c)AFP/Frankie TAGGART