■目的は「黙らせる」こと

 しかし、メッセージアプリのテレグラム(Telegram)には憎悪に満ちた書き込みが続いている。

 ネットの偽情報を調査しているジャーナリストのイングリッド・ブロートニヒ(Ingrid Brodnig)氏は、「ケラマヤー医師の死を祝う人や、死因はワクチンだと信じている人もいる」とし、オンラインヘイトを取り締まる「厳格な法律は既にある」が、実際の取り締まりは不十分だと指摘した。

 オーストリアの閣僚からは、検察にヘイトスピーチ絡みの事件専門の部署を設けるべきだとの意見も出ている。

 医師や研究者は、世界各地で標的となっている。新型コロナ関連の偽情報に対抗する医師団の一員として活動し、誹謗(ひぼう)中傷を浴びてきたフランスの感染症専門家カリーヌ・ラコンブ(Karine Lacombe)氏は、脅迫に対する当局の対応は不十分だと訴える。

 今年に入ってから公の場への露出を減らしているラコンブ氏は、中傷を浴び続けるうちに「リスクを冒す価値はないと考えるようになる」と、AFPに語った。

「そういう意味では(攻撃側の)勝利だ。彼らは私たちを黙らせようとしている」 (c)AFP/Anne BEADE with Denise HRUBY