【8月8日 AFP】レバノンの首都ベイルートで7日未明、アドリエ(Adlieh)地区にある収容施設から、31人がのこぎりで窓を壊して脱走した。司法筋が明らかにした。

 国内治安部隊(ISF)は、31人の捜索を進めているとしている。

 匿名を条件にAFPの取材に応じた司法筋によると、被収容者は施設に持ち込まれたのこぎりを使って窓を壊したとみられる。脱走したのはレバノン人の他、シリア人やパレスチナ人など外国人も含まれている。

 ヒューマン・ライツ・ウオッチ(Human Rights Watch)などの人権団体によると、この施設では収容されたシリア難民や外国人の出稼ぎ労働者への虐待が横行していた。

 レバノンの国家人権委員会(National Human Rights Commission)のバッサム・カンタル(Bassam al-Kantar)氏によれば、同施設は過密状態で風通しも悪く、下水の悪臭や日照不足など劣悪な環境にある。

「被収容者は栄養失調に陥っているが、家族から食事を受け取ることも許されていない」と同氏は指摘。「治療も行われず、多くの被収容者が皮膚病を患っている」とし、主な原因は施設内の衛生状態が悪いためだと説明した。

 レバノンではインフレが加速し、公務員の給与は過去最低に落ち込み、多数の兵士や治安部隊員が生活費を確保しようと退職を余儀なくされている。そのため、もともと劣悪だった刑務所や収容施設の環境はさらに悪化し、暴動などが多発している。(c)AFP