【8月10日 People’s Daily】中国の高山地帯に位置するチベット自治区(Tibet Autonomous Region)には広大な草原があり、牧畜や農業が基幹産業となっている。近年は牧畜の増加や異常気象により草原の劣化、砂漠化が問題になっている。このため、自治区全体で人工植栽プロジェクトが進んでいる。

 自治区で畜産業の盛んなナクチュ市(Nagqu)は草原面積が広い一方、標高が高くて生態環境は過酷な地域だ。市政府は高山の牧畜地域に適した高品質の牧草を求め、10年にわたり約100種類の牧草を導入。このうち19種類を選別し、約3000ヘクタールの土地に人工植栽が行われた。

 牧畜農家のイェンジュンさんは「高さ1.5メートルのエンバクが育っています。こんなに標高の高い場所で草が根付くなんて思っていませんでした」と喜びの声を上げる。

 ヒマラヤ山脈北麓に位置するシガツェ市ニエルドゥイ郷では、約660ヘクタールの人工植栽基地で作業員が牧草を植えている。責任者は「今年もムラサキウマゴヤシ、エンバクを植える予定です」と話す。地元では過去6年間で1500ヘクタールに人工植栽を行い、羊の繁殖や牧草のペレット生産に役立っている。

 協同組合の飼料加工工場では作業員が忙しく働いており、66歳のルンジュ組合長は「牛や羊にエサを安定して供給できるようになった上、私たちの村が美しくなりました」と笑みを浮かべる。

 チベット自治区内の人工植栽面積は約10万ヘクタールに達している。同自治区リモートセンシング応用研究センターは、人工衛星を使った高解像度分析で牧草の成育状況を確認。ほとんどの地域で天然の草原よりはるかに成長しているという。また、牧草のない地面と比較すると、植栽地域は土壌の流出が47%減少している。人工植栽プロジェクトは人々の暮らしと環境を守る重要な役割を果たしている。(c)People’s Daily/AFPBB News