【8月9日 People’s Daily】北京市海淀区(Haidian)の郊外にそびえ立つ通信塔の下で、運用保守員が基地局のコンピューター室を開けて定期検査を行っていた。「これが電源バッテリーのカスケード利用です」。携帯電話の基地局を運営する「中国鉄塔(China Tower)」の王鼎乾(Wang Dingqian)さんが指をさして説明する。

 カスケード利用とは、新エネルギー車(NEV)から回収した使用済みバッテリーを工場で補修し、利用可能な水準に戻して循環使用することを指す。中国鉄塔でカスケード利用事業を統括する王さんは「この基地局では昨年6月に、従来の鉛蓄電池からカスケード利用のリン酸鉄リチウム電池に交換しました。4時間のバックアップ電力需要を満たし、鉛蓄電池より強力で環境汚染の心配も少なくなりました」と話す。

 NEVのバッテリーは一般的に使用後も70~80%の残容量がある。検査、分解、補修をすることで、高いバッテリーエネルギー密度を必要としない分野に再活用できる。中国では2021年にNEVの販売台数が350万台を超えた。一方、2018年までに販売された約130万台のNEVは徐々に廃棄期間に入り、使用済みバッテリーのリサイクル推進は環境保護と健全な経済発展のため急務となっている。

 中国工業情報化省などは2021年8月、「NEVバッテリーのカスケード利用に関する管理弁法」を発表。天津市(Tianjin)、河北省(Hebei)など17地域でリサイクル推進プロジェクトを試行している。中国鉄塔の副総経理の劉国鋒(Liu Guofeng)氏は「2021年末の時点で、カスケード利用の電源バッテリーを使っている基地局は50万か所に上り、電力量はNEV5万台分の使用済みバッテリーに相当します」と話す。

 カスケード利用の電池は通信基地局のバックアップ電源に使用されるほか、物流や食事デリバリーの低速電力自動車などにも使用されている。バッテリー交換サービス子会社・藍谷智慧(北京)能源科技の孫杉(Sun Shan)副総経理は「昨年1年間で回収した使用済みバッテリーの容量は全体で数百兆ワット時分に上る」と説明。リチウム電池やコバルト製品を開発する華友コバルトの担当者は「IoT(モノのインターネット)、5G、無人自動車、ビッグデータ、スマートシティーの建設などでカスケード利用のバッテリーを利用し、北京、上海、深セン(Shenzhen)、広州(Guangzhou)など60以上の都市で運用されています」と説明する。

 2025年までに中国で廃棄される動力電池の累積数は80万トン近くになると予想されている。今後、カスケード利用に携わる企業が増え、バッテリー再利用は新たな産業に発展していく。(c)People’s Daily/AFPBB News