【8月4日 AFP】国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)は4日に公表した報告書で、ロシアの侵攻を受けているウクライナの軍が、国際法に違反する形で学校や病院を含む民間人居住地域に軍事拠点を構築して市民の命を危険にさらしていると批判した。

 アムネスティは、自衛する側のこうした戦術は「ロシアの無差別的な攻撃を正当化するものではない」として、北東部にある第2の都市ハルキウ(Kharkiv)などでのロシア軍による「戦争犯罪」はウクライナ側の戦術とは無関係だと強調した。

 その一方で同団体は、ウクライナ軍がハルキウやドネツク(Donetsk)、ルガンスク(Lugansk)、ミコライウ(Mykolaiv)各州にある19の自治体で、民間人を危険にさらした可能性がある事案を列挙した。

 アムネスティの調査員は、ウクライナ軍が病院5か所、学校22か所を「事実上の軍事基地」に転用していたことを確認。学校は閉鎖されていたとはいえ、民間人居住地域内に所在していた。

 アムネスティのアニェス・カラマール(Agnes Callamard)事務総長は「ウクライナ軍が民間人居住地域で活動する際に市民を危険にさらし、戦時国際法に違反するパターンを記録した」と述べた上で、「自衛する側にいるということは、ウクライナ軍が国際人道法を順守しなければならないという責務を免除するものではない」と指摘した。

 報告の中で、ウクライナ軍が拠点を築く民間人居住地域は前線から数キロ離れており、民間人に対して危険を及ぼさない「代わりになり得る場所」もあるとの見解を示した。また、ウクライナ軍がこうした拠点からロシア軍に向かって攻撃を仕掛けることで、市民が報復攻撃にさらされるにもかかわらず、避難の呼び掛けもしていなかったと批判した。

 報告書の公表を受けて、ウクライナ政府は強く反発し、アムネスティはロシア側のプロパガンダの発信元と結託していると非難した。(c)AFP