■届かない障害者支援

 日本財団(The Nippon Foundation)の樺沢一朗(Ichiro Kabasawa)常務理事(50)は、ウクライナの障害者が置かれている状況について、公的な支援が直接届いておらず、「ウクライナ支援の対象からこぼれ落ちたものすごく弱い人たち」だと指摘する。

「例えば、東日本大震災での障害者の死亡率は一般住民の2倍。つまり、危機に際して最も脆弱な人たちは障害のある人というのが、東北の震災で明らかになっている」

 樺沢氏は、3月にポーランドのクラクフ(Krakow)やオーストリアのウィーンを訪れ、現地で受け入れているウクライナ難民の現状を視察。財団は4月から半年間の予定で、ウクライナの障害者への緊急支援を開始した。

 財団は障害者や高齢者を支援するNGOに約2億5000万円を助成。取り残された障害者の救出や医薬品提供に加え、ポーランドなど隣国では一時滞在場所の提供や生活再建支援を行う。これまでに800人以上の障害者とその家族の避難を支援し、食料などの物資を約8600人に届けた。

 しかし、ウクライナには障害者が270万人いるとされ、民間支援には限界がある。

「気持ちのある人はできる範囲でいろんなことをやろうとしている。日本財団の支援も半年で数億円の規模。しかし、これでは圧倒的に物量では足りなくて、(大規模支援が)できるのはやはり政府や国連などの公的機関。そこにどうやってつないでいくかが課題」と、樺沢氏は力説する。

■ウクライナへ音楽を届ける夢

 香介さんは新型コロナウイルスの感染拡大で音楽活動を中断していたが、行動制限の緩和を受け、ライブハウスでの演奏を再開した。今後はアルバム制作だけでなく、ウクライナ支援のチャリティーコンサートも開催したいと言う。

「もう少しコロナの状況が落ち着けば大規模なチャリティーイベントも人を集めてやりたいという夢がずっとあります。お客さんが大勢呼べるようになった時には大きなホールで、例えば盲導犬のチャリティーコンサートであるとか。大きなチャリティーライブがしたい」

 そして、もう一つの夢はウクライナの人々に自らの楽曲を直接届けることだ。

「残念ながら今は難しいですけど、街の状況が落ち着くか、治安が回復したら、ウクライナで演奏したり、現地の方と交流したりすることができれば」と、香介さんは声を弾ませた。(c)AFPBB News/Marie SAKONJU/Shingo ITO