【8月2日 東方新報】中国ではここ数年、日本の夏祭りをイメージしたイベント「夏日祭」が各地で人気となっている。ところが今年7月にインターネット上で「文化侵略だ」という批判がわき起こり、次々と中止に追い込まれている。

 中国では毎年1~2月の春節(旧正月、Lunar New Year)の時期、仏教や道教の寺院で多くの露店が集まる「廟会(Miaohui)」が開かれるが、真夏にはそうした行事はない。日本のアニメ作品で登場人物たちが浴衣を着て綿菓子を食べ、金魚すくいなどを楽しむシーンに中国の若者の間で関心が高まり、ショッピングセンターやホテルで「夏日祭」が開かれるようになった。日本の露店や盆踊りを再現し、浴衣の無料貸し出しサービスのほかアニメコーナーを併設するケースが多い。会場を訪れる若者たちは「真夏の夜のお祭りというのがクール」「あこがれの浴衣を着ることができた」と喜びの声を上げている。

 ところが、中国東部の江蘇省(Jiangsu)南京市(Nanjing)の国際展覧センターでアニメやコスプレをテーマにして7月17日に行われる予定の「夏日祭」が急きょ中止となった。ネット民の間で「宗教がルーツの海外行事をするのは文化侵略だ」という批判が起きたためで、東北部の遼寧省(Liaoning)鉄嶺市(Tieling)、北西部の山西省(Shanxi)大同市(Datong)、東部の山東省(Shandong)棗庄市(Zaozhuang)、南西部の広西チワン族自治区(Guangxi Zhuang Autonomous Region)桂林市(Guilin)、雲南省(Yunnan)大理市(Dali)、南部の広東省(Guangdong)韶関市(Shaoguan)で予定されていた「夏日祭」が次々と中止になった。各地の主催会場は「天候不順のため」「正式な手続きがされていなかった」「ただのアニメイベントと聞いていた」などと中止の理由を説明している。

 今の日本で「祭」と言えば楽しいイベントをイメージするが、中国で「祭」という文字は「先祖を祀(まつ)る、弔う」という意味合いが強い。日本の盆踊りは由来をたどれば先祖の供養がルーツであり、「夏日祭」の中には日本の神社の鳥居を再現しておみくじコーナーを設ける(これは夏祭りというより正月の光景だが)会場もある。中国全土でこうした「夏日祭」イベントが増えるにつれ、「日本の宗教や文化をあがめている」と不満を持つ人も増え、批判が噴出した形だ。

 中国ではクリスマスは「聖誕節」として知られているが、クリスマス関連のイベントが行われると、たびたび「海外の宗教行事を祝うことは中国の伝統文化を圧迫することだ」という批判がつきまとう。1840年のアヘン戦争以降、長年にわたり欧米列強や日本侵食された歴史がある中国において、海外文化の流入は常に敏感な問題だ。

 最近は中国の若者の間で、海外ブランドより国産ブランドを好む「国潮」ブームも起きている。さまざまな海外文化の流入も国内ブランドの成長も、中国が高い経済成長を続け市民の消費力が高まったことを反映しているといえるが、一種の文化的な衝突ももたらす形となっている。(c)東方新報/AFPBB News