【8月5日 AFP】中国のキョンシーやタイの頭部と内臓だけの姿で空を飛ぶお化け──。台湾南西部の都市、台南(Tainan)で、アジアの死後の世界やお化けの表現に焦点を当てた展覧会が開催され、人気を博している。

「アジアの地獄と幽霊(Ghosts and Hells: The underworld in Asian art)」展の会期初日、台南市美術館(Tainan Art Museum)には数千人が列をつくった。混雑を避けるため、入場券の販売が2回も停止されるほどだった。

 展示物の多くはフランスの博物館から借りた物で、死後の世界に関する伝統的な物品や美術作品、ポップカルチャー作品などが展示されている。タイの頭部と内臓だけの姿で空を漂う女性のお化け「グラスー」の人形や、日本の地獄を描いた絵のほか、台湾人アーティストによる作品もある。

 目玉は実物大のキョンシーの人形3体。キョンシーは死体がよみがえった吸血鬼で、四肢が硬直しているため、ぴょんぴょんと跳びはねて移動する。人形と同じように手を突き出したポーズで写真を撮る人の列が絶えない。

 林育淳(Lin Yu-chun)館長はAFPに対し、「大勢来館すると思ってはいたが、これほどとは思わなかった」と話した。

 館長によると、中国文化では死に関する話は一般的にタブーとされているが、新型コロナウイルスの流行で台湾では議論が活発になった。「直接的に影響を受け、死に直面しなければならなくなった人も多い」

 美術館の横でかき氷の屋台を営む女性は「コロナの流行前でも、こんなに人が集まっているのを見たことがない」「列は少なくとも1キロはあった」と話した。

 林館長は「アジアのお化けは女性的な傾向があり、女性のお化けが多い」と指摘。一方「西洋のお化けは、吸血鬼などいかめしい見た目をしている」という。

 現地メディアによると、台湾北部のあるキリスト教教会は、展覧会の実施が発表されると、「台湾と国民を冒涜(ぼうとく)する」とネットで批判。開催中止を求めた。道教系の団体なども、展覧会が迷信を広めると警鐘を鳴らした。

 美術館は来館者にお守り1000個を用意したと報じられている。

 展覧会に来た20代の男性警察官は、展示は内省するきっかけになったと話した。「(地獄に行くのは)怖いから、これからは悪いことはしないようにする」と笑った。

 台北の病院で検査技師として働く25歳の女性は、「ちょっと感動した」「地獄は、理解すべき私たちの文化の一部だ」と語った。(c)AFP