【8月1日 AFP】夏はまだ始まったばかりだが、中東・湾岸諸国の一部では気温がすでに50度を超えている。

 6月から8月にかけて、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、カタール、クウェート、バーレーン、オマーンの湾岸諸国では、正午から4時間程度、屋外労働が禁止されている。

 昨年の世界保健機関(WHO)の報告書によると、クウェートでは暑さが厳しい日の死亡リスクが2倍から3倍に跳ね上がる。その影響を最も受けるのが、屋外労働者の大部分を占める外国人労働者だ。

 石油資源が豊富で裕福な湾岸諸国には、インド、パキスタン、ネパール、スリランカ、バングラデシュから多くの出稼ぎ労働者が来ている。安価な労働力を提供する外国人労働者は、高給取りの公務員を志望する国民の間で敬遠される建設作業やごみの収集、道路清掃、食料配送といった屋外での仕事を代わりに引き受けている。

■日陰でも耐えられない

 屋外で働く人々は、正午からの屋外労働禁止時間には寮に戻るか、日陰で休む。しかし、近年は、日陰にいても耐えられないような日が増えている。

 6月に入り、クウェートやサウジアラビアなど、多くの場所で気温が50度に達した。この2か国に関しては5月に53.2度を記録。同月の世界最高気温となった。

 クウェートの気象学者イッサ・ラマダン(Issa Ramadan)氏は、「この10年間はクウェート史上、最も暑い」と述べ、しかも「クウェートの夏は今や9月まで続き、時には10月にまで及ぶ」と言う。

 バングラデシュから働きに来ている建設労働者ムハンマド・ムカラムさんは、「8時間のシフトをできるだけ前倒しにするために、午前6時から働き始め、休憩時間に(4時間)中断し、その後、残り2時間働くこともあります」と語った。

 厳しい暑さは湾岸地域全体の問題として前々から懸念されてきた。人権団体は、今年のサッカーW杯開催国のカタールに対し、「熱中症」に関連した労働者の死を調査するよう求めている。

 だが、湾岸諸国で死亡した移民・出稼ぎ労働者に関する信頼できる数字は存在しない。各国は統計を発表せず、NGOやメディアが発表する推定値に常々異議を唱えている。

 アジア諸国を中心とした人権団体によるプロジェクト「バイタルサイン・パートナーシップ(Vital Signs Partnership)」は、今年3月の調査報告書で「南・東南アジアからの湾岸諸国への移民労働者の年間死者数は1万人に上っている」と報告。また、その半数以上について「自然死」または「心停止」と記録している。