■最終販売先はアフリカかアジアか

 モロトクさんは今年に入ってから、親ロシア派による支配地域の企業を通じて、ヒマワリの種800トンをロシアに販売した。

 ただ、ロシアに入った後の穀物がどうなるかは把握していないという。「アフリカやアジアへ送られるのかもしれない。私は知らない」

 農場の従業員は、カルムイキウカ村がロシア軍に陥落した際に戦闘はなかったと話しており、AFPも物的被害は目にしていない。とはいえ、同村からほんの数十キロ離れた場所では激しい戦闘があった。

 農場の季節労働者の一人で、姓は明かさずアレクサンドルとのみ名乗った男性(21)は、ロシアの侵攻開始当初は同村も「パニック」に陥ったと振り返った。

 だがアレクサンドルさんは、床に落ちた穀物をほうきで掃き出しながら、ロシア軍の存在に皆「慣れてきている」と話した。

 同州の多くの住民がそうであるように、ロシア語とウクライナ語を交えて会話するアレクサンドルさんは、ロシア通貨ルーブルでの給与支給を約束されているものの、実際に幾らもらえるかは分からないと語った。

 カルムイキウカから600キロ離れ、ロシアが一部を支配しているウクライナ南東部ザポリージャ(Zaporizhzhia)州では、見渡す限り小麦畑が広がっている。収穫後は、メリトポリ(Melitopol)市の工場で小麦粉に加工される。

 同市の親ロ派行政当局トップ、アンドレイ・シグタ(Andrey Siguta)氏は、工場の操業に満足している様子だった。

 ウクライナで戦うロシア軍のシンボル「Z」のバッジを着用したシグタ氏は、地元の穀物生産者が親ロ派当局と契約を結んでおり、「われわれは国営の穀物会社を設立し、州内の全生産者から購入する」と明らかにした。

 今は「州の食糧安保」が最優先だとするシグタ氏は「誰にどの程度の量を販売するか決めるのは、その後の話だ」と述べた。(c)AFP/Andrey BORODULIN