【8月1日 People’s Daily】耳で本を「読む」、講演を聞く、ドラマを鑑賞、人と付き合う。第19回中国全国民読書調査報告によると、2021年、中国の成人人口の3割以上(32.7%)が、本を聞く習慣があるという。音声読み上げ、ポッドキャスト、オーディオアプリなどの新モデルが続出し、読書の可能性が広がっている。

 現在では、「紙の本・電子書籍・オーディオブック」の同時発売が、多くの出版書籍のスタンダードになっている。今年4月、人民文学出版社から中国語簡体字版の「クイーンズ・ギャンビット(The Queen’s Gambit)」の紙の本が発売されると同時に、電子書籍とオーディオブックも同時にリリースされた。「今は『紙の本・電子書籍・オーディオブック一体化』の融合出版の時代のため、視覚型学習者でも聴覚型学習者でも、必要に応じて選択することができる」。人民文学出版社デジタル出版・科学技術部の趙晨(Zhao Chen)部長は、「新しい書籍はコンテンツや著作権の段階から融合開発し、出版された書籍が追加印刷する際に、オーディオブックのQRコード付きのしおりが付けられるようになった。これは相次ぐ更新や相互に連動するプロセスだ」と述べた。

 また、「紙の本よりオーディオブックが先にリリースされる」というリバース出版も新たなトレンドになりつつある。

 5GやAIの発展により、TTS(Text-to-Speech)技術は、音声読み上げのあらゆる場面で浸透している。AIによる執筆・放送するオーディオブックやニュース・情報が続々と登場し、オーディオ系オウンドメディアや読書アプリに多く採用されている。「TTS技術は、AIとビッグデータのディープラーニングと関わっており、音声コンテンツ制作の効率を効果的に向上させることができる。現在、最新の技術で作成した音声コンテンツは、実際の人の声と聴き分けがつかないほどの効果を得ている」と、音声プラットフォームアプリHimalaya(ヒマラヤ)AI音声実験室の責任者の盧恒(Lu Heng)さんは語った。紙の本は膨大な在庫があるにもかかわらず、高品質のオーディオブックを開発するコストが高いのに対し、バーチャルキャスターは1日に500万字のオーディオブックを録音でき、録音コストを90%以上削減できる。AIは、本を聞くニーズの高まりに応えたスピーディーなオーディオ製品の具現化のためのより便利な切り口を提供している。

 音声読み上げの発展に伴い、ラジオドラマなどニッチなジャンルがより多くの人の視野に浸透してきており、多様なニーズに応えている。ラジオドラマという音声ジャンルは「耳の演劇」のようなもので、聞き手に一冊の本を読ませるだけでなく、人の声や音楽、効果音を通して物語を語り、豊かな美的体験をもたらしている。ネット上の膨大な文学作品、改編価値の高いIP(小説やゲームなど知的財産)や市場メカニズムの整備は、多くのプロの吹き替えスタジオや社会団体のラジオドラマへの注目へとつながった。声優の声が好きでドラマを鑑賞するようになる層も、どんどん大きくなってきている。

 良質なコンテンツにふさわしい音声表現者を見つけるのは容易ではない。モノマネや、きれいな発声がよいという単純なものではない。「ラジオドラマの制作は、芸術的な創作活動に近く、初期の脚本化、オーディション・キャスティング、中期の録音、音楽制作、後期のミキシングなど、全工程は半年から1年もかかる」と、オーディオ配信団体729声工場の共同設立者の張怡然(Zhang Yiran)さんは述べた。張さんは好きで業界に入った「80後(1980年代生まれ)」だ。(c)People’s Daily/AFPBB News