【7月30日 People’s Daily】中国北西部の甘粛省(Gansu)楡中県(Yuzhong)夏官営鎮(Xiaguanying)高墩営村の農家書房に入ると、本棚には農業栽培、特別飼育、世界の名著、法律知識などの書籍が、カテゴリーごとに並んでいる。「今は1万5000冊以上の本がある。書房に来てもらって読むこともできるし、登録して持ち帰って読むこともできる。村の人々が一番好きなのは農業技術の本だ」と、分厚い貸し出し登録名簿を取り出しながら、管理人の景正紅(Jing Zhenghong)さんはこのように述べた。景さんによると、村では高原の夏野菜を主に栽培しており、農閑期に、人々は書房に来て本を読んだり、借りたり、野菜の栽培方法について検討したりする。

「甘粛省は2005年から農家書房の建設を試験的に開始し、2012年には省内の全行政村での完全普及を達成した」。甘粛省委員会宣伝部の王成勇(Wang Chengyong)副部長は、現在までに、省内で計1万6321軒の農家書房を建設し、出版物の保有数は3100万冊に達した。農家一人当たりの図書保有数は2.6冊で、農家書房一軒当たりの年間平均貸し出し登録数は、延べ120冊程度で、年間の総貸し出し登録数は、延べ200万冊を超えていると紹介した。

 甘粛省図書館は毎年6000冊以上の本を入荷し、半年に1回更新している。農民の「読める、利用できる、残せる」という原則に基づき、各地の自然環境、文化伝統、生活習慣などの違いにより、全省を7つの地域に分け、図書を正確に配置する。さらに、政府は農業技術者を招へいし、農家書房で専門的な訓練を行うこともある。

 甘粛省では、農家書房と公共図書館の資源を統合し、より強い読書ネットワークを構築している。「昔は農家書房と図書館は、本の選択や利用という点では、比較的独立していた」。甘粛省農家書房建設管理弁公室の李旭紅(Li Xuhong)副主任は、現在は、多くの地方で、図書カードを作れば、「共通カード」の機能を付与すると述べた。

 西嶺村は甘粛省粛南ユグル族自治県(Sunan Yugu Autonomous County)大河郷に位置する、祁連山脈の北麓にある完全な牧畜業村落だ。「この村は113世帯が散在して暮らしており、村人は農家書房に通ってまで本を借りる気はあまりない」。西嶺村党支部書記兼村の農家書房管理人の顧維東(Gu Weidong)さんは、このため、村は「馬上の書房」という革新的な管理サービスモデルを導入し、不定期に訪問して本を届けるようになったと語った。これまでに、「馬上の書房」は、西嶺村の農民や牧畜民を対象に、1000回以上の訪問サービス、300回以上の電話購読サービスを行った。

 農家書房は、農村の子どもたちの読書ニーズにも配慮している。甘粛省天水市(Tianshui)麦積区馬跑泉鎮什字坪村農家書房の管理人の倪海江(Ni Haijiang)さんは、「都会の子どもに比べ、農村の子どもたちは知識を得るためのチャンネルが少ない。そんな中、農家書房は彼らが外の世界とつながるための重要な懸け橋のような存在だ。毎日、20人くらいの子どもが本を読みに来る」と述べた。村の農家書房には7000冊以上の蔵書があり、基本的にみんなの読書ニーズを満たすことができる。

 時代は変わり、農家書房もレベルアップする必要がある。2019年、甘粛省農家書房デジタルプラットフォーム「百草園」クライアント端末がオンラインで稼動した。これまで、甘粛省では、100万人以上の農民が、デジタル農家書房を通じて読書している。実店舗書店に比べ、デジタル書房は膨大なリソースを有している。「畑」から「クラウド」へ、農家書房は、村人のライフスタイルや心構えを変えつつある。(c)People’s Daily/AFPBB News