【8月7日 AFP】スペインの多くの村がそうであるように、北部アラゴン(Aragon)州のベルチテ(Belchite)も1936~39年の内戦で徹底的に破壊された。だが、今も内戦末期の姿をほぼとどめているのはこの村だけだ。

 散乱するがれきの中に辛うじて立つ時計台、大聖堂に残る弾痕や迫撃砲の穴──。集団墓地で人骨を掘り起こしながら、考古学者のイグナシオ・ロレンソ(Ignacio Lorenzo)氏は「男性、女性、子どもも見つかっています」と言う。

「左派政党に投票したこと、あるいは組合に加入していたことが罪とされました」

 ロレンソ氏のチームが発見した90人の遺骨の中には、手足を縛られたものや、拷問の痕が残るものもあった。

 生存者の証言によると内戦初期、フランシスコ・フランコ(Francisco Franco)将軍が率いた国民戦線によるベルチテの弾圧では、約3000人の住民のうち350人が処刑された。

「スペインのホロコースト(The Spanish Holocaust: Inquisition and Extermination in Twentieth-Century Spain)」の著者で英国の歴史家ポール・プレストン(Paul Preston)氏は、前線から遠く離れた場所で殺されたスペイン人は約20万人で、うち15万人はフランコ軍の支配地域、残りは共和派地域で殺害されたと推測している。

 左派・社会労働党のペドロ・サンチェス(Pedro Sanchez)首相は今年6月、「失踪者は今なお11万4000人」に上り、その大半が共和派だと述べた。サンチェス政権は内戦中の失踪者の遺骨発掘を「国家の責任」とする法案を提出し、7月に下院で可決された。

 内戦後にベルチテを訪れたフランコは、プロパガンダのために廃虚のまま保存するよう命じた。生き残った住民のための新しい村は、その隣につくられた。現在、廃虚はフェンスで囲まれ、ガイド付きツアーでしか訪れることができない。