【7月25日 AFP】南アフリカ・ヨハネスブルクの黒人居住区にある畳の敷き詰められた白い建物──。畳の上では、道着や学校の制服姿の子どもたちが転げ回っている。

 ここは、金融街サントン(Sandton)に隣接する貧困地区アレクサンドラ(Alexandra)で「柔道フォーピース(Judo for Peace)」が主催する柔道教室だ。

 柔道フォーピースのコーディネーターで教室を主宰するロベルト・オーランドさんは、「柔道を通じて(中略)難民や移民、(そして)南アフリカ人が一緒になること」を目指していると語る。「誰もが平等に、共に学んで技能を磨き、一緒に価値観を築く場なのです」

 アレクサンドラ地区では2008年、他のアフリカ諸国からの移民ら60人以上が殺害される事件が起きた。アパルトヘイト(人種隔離政策)撤廃以降に起きた外国人嫌悪による襲撃事件として最悪の被害となった。

 それから14年たった今も、黒人を主な標的とする外国人排斥の災禍は消えていない。そうした襲撃事件の大半を起こしているのは、南アフリカ人の黒人の失業者たちだ。

 今年に入り、アレクサンドラ地区ではまた緊張が高まった。自警団「オペレーション・ドゥドゥラ(Operation Dudula)」が数か月にわたり、不法移民の国外追放を要求してデモを繰り広げたのだ。「Dudula」とは、国内最大民族ズールー(Zulu)の言葉で「押し返す」ことを意味する。

 オーランドさんは、この地区に道場を開くのは今しかないと決意を固め、先月、正式に開館した。

「アレクサンドラは南アフリカで最大かつ最も密集した地域の一つです。ここでは何度も外国人嫌悪による襲撃が起きており、人々に共生する方法を教えなくてはならない地域の一つだと思うのです」