【7月23日 AFP】シベリア(Siberia)のイヌは7400年前にはすでにオオカミに比べてかなり小型化し、魚や貝類、海洋哺乳類などを餌として人にもらうようになっていたとする論文が22日、米科学誌サイエンス・アドバンシズ(Science Advances)に発表された。

 研究を主導したカナダ・アルバータ大学(University of Alberta)のロバート・ロージー(Robert Losey)氏は、人が狩猟や家畜の番、そりにイヌを使役するようになり、古代のイヌの数が増えたことの説明がつくと述べている。

 同氏はAFPに対し「イヌの餌の長期的な変化は単純化されすぎてきた」と述べ、これまでの研究では、約4万年前にイヌがオオカミから分岐した過程を説明する理論として重視されていた説は主に二つだったと説明。

 一つは、氷河期に人に慣れたオオカミが人の居住地に近づいて肉をあさるようになり、やがて野生のオオカミの集団から孤立し、人為的に繁殖させられてイヌになったというもの。もう一つは、農業革命以降、でんぷんの消化能力が向上したイヌが生まれたという説だ。

 古代のイヌの餌についてより深く知るため、ロージー氏の研究チームはシベリアで、1万1000年前までさかのぼる古代のイヌ約200匹と、同数の古代のオオカミの骨を収集。コラーゲンの標本を採取し、タンパク質を分析した。

 さらに、骨から体の大きさを統計的に割り出し、安定同位体分析の手法を用いて餌の種類や量を推定したところ、7000~8000年前のイヌは「すでにかなり小型化し、オオカミにできることができなくなっていた」という。

 その結果、餌について人への依存度が非常に高まり、オオカミが自分より大きい獲物を狩るのに対して、イヌは小さな獲物を狙うか死肉をあさるようになった。

「イヌは魚や貝類、アザラシやアシカなど、自分ではなかなか手に入れられないものを食べていたとみられる」とロージー氏は述べた。

 また「1年のうち7~8か月は湖や川が凍結しているシベリア」で、古代のイヌが魚を食べていたことが分かったとしている。

 一方のオオカミは、この当時も今も群れで狩りをし、主にシカ科の動物を食べていたという。(c)AFP/Issam AHMED