【7月22日 AFP】メキシコ中部ハリスコ(Jalisco)州で、自閉症の息子を持つ、介護者の権利擁護団体メンバーの女性が火を付けられ死亡する事件があった。21日には警察の対応を非難し、正義を求めるデモが行われた。

 亡くなったのはルス・ラケル・パディジャさん(35)。「アイ・テイク・ケア・オブ・メキシコ(I take care of Mexico)」という団体に所属していた。

 目撃者の話としてルイス・ホアキン・メンデス(Luis Joaquin Mendez)検事が伝えたところによると、パディジャさんは16日、同州サポパン(Zapopan)の公園で男3人と女1人にアルコールをかけられ、火を付けられた。当局によれば、19日、搬送先の病院で死亡した。全身の90%にやけどを負っていたという。

 検察は、フェミサイド(女性を標的とした殺人)とみて捜査を進めている。

 メンデス検事によると、パディジャさんの隣人の男セルヒオ・イスマエル容疑者、通称「エヌ」を、過去の事件に関連し、傷害、脅迫、名誉毀損(きそん)の容疑で逮捕した。ただ、目撃者によればイスマエル容疑者はパディジャさん襲撃の現場にいなかったため、現時点ではフェミサイドは逮捕理由になっていない。

 パディジャさんは5月、イスマエル容疑者から脅迫されており、自宅が入っている建物の壁に「生きたまま焼いてやる」と落書きされたと訴えていた。また、同容疑者が大音量で音楽をかけるなど日ごろから迷惑行為をしており、息子の健康に影響が出ているとソーシャルメディアに投稿していた。

 パディジャさんは数年前、元夫からも暴力を受けていた。そうしたこともあり、保護措置の対象となっていた。

 サポパンの警察署前には21日、大勢の女性が集まり、警察の怠慢と無関心を非難するデモを行った。

 政府統計によると、メキシコでは毎日平均10人の女性が殺害されている。その多くがフェミサイドだ。

 アンドレス・マヌエル・ロペスオブラドール(Andres Manuel Lopez Obrador)大統領は、パディジャさんの殺害について、前政権の新自由主義時代に広がった「価値観の喪失」を反映したものだと非難した。(c)AFP/ Sergio Blanco