【7月29日 AFP】フランス人の火山学者モーリス・クラフト(Maurice Krafft)と妻カティア・クラフト(Katia Krafft)は、火山への愛で結ばれ、そのために命を落とした──。1991年の雲仙・普賢岳の噴火で亡くなったクラフト夫妻のドキュメンタリー映画『Fire of Love(原題)』が、このほど米国で公開された。

 溶岩が噴き出る火口近くや内側で撮影された、魅力的で、恐ろしくもあり、時に奇抜な映像で構成された作品は、米誌ナショナル・ジオグラフィック(National Geographic)と、韓国映画『パラサイト 半地下の家族(Parasite)』の米配給元として知られる独立系配給会社ネオン(Neon)が手掛けた。

 上映館数は少ないものの絶賛されており、すでに米サンダンス映画祭(Sundance Film Festival)など複数の映画祭で賞を受賞している。

 セーラ・ドーサ(Sara Dosa)監督は、アイスランドの火山をめぐる別のドキュメンタリー作品を制作中、2人の残した「壮大な映像」に偶然出会った。そして「レンズの向こうから放たれる、他に類を見ない愛」に引き付けられた。

 クラフト夫妻は25年にわたり、共に世界中の活火山を旅して、約20冊の本を執筆、長編映画5本を制作した。数え切れないほどのテレビ番組に出演したり、講演を行ったりもした。

 だが、その名を世界に知らしめたのは恐らく、200年近く眠っていた普賢岳が噴火した際に犠牲になったことだろう。91年の噴火では、大火砕流が東側の山麓を襲い、甚大な被害をもたらした。

『Fire of Love』はこの悲劇で始まり、そして幕を閉じる。だが、映画の大半は、夫妻と火山の「三角関係」に割かれている。

 ドーサ監督はAFPに、「火山用語を通して語られる一種の神秘的なラブストーリーを描きたかった」と語った。「それこそ2人を結び付けたものであり、2人の関係の推進力、燃料となった」