【7月20日 東方新報】中国の学校は7月に卒業シーズンを迎えるが、雲南省(Yunnan)昆明市(Kunming)の小学校が6年生の児童に「卒業論文問答」を行わせたとして、物議を醸している。

 問題となっているのは、昆明市の北清実験小学校。7月3日、6年の児童たちは学校の講堂で教師たちの前でマイクを握り、「生態環境を保全することの重要性」「SNSショート動画が小学生に及ぼす影響」「中国における女子の服装の変遷」「秦の始皇帝が中国史に与えた影響」をテーマに発表し、質問を受けた。しかも児童たちは発表をすべて英語で行った。この学校では昨年6月にも「福島第1原発の処理水の海洋放出について」「食事の持ち帰りが環境に及ぼす影響」などの論文問答をしたという。

 インターネットでは「これは大学生でも難しいテーマだ」「大学生の卒論問答の枠組みを子どもに押しつけるのはおかしい」と批判的な意見が飛び交った。発表の様子を撮影した動画を見ると、児童たちは大人が使う用語を丸暗記して話しているように見え、「発表内容は親が書いているのではないか」という疑念も多くあった。

 北清実験小学校は「児童たちは5年生の時から時間をかけて発表の準備をしている。論文答弁は成績にも関係ない。保護者の同意も得ている」と弁明した。

 中国メディアは、小学生への論文問答は「助長抜苗」「邯鄲学歩」だと指摘した。いずれも中国古典に出てくる言葉で、「助長抜苗」は、苗の成長を促そうとして引っこ抜いてしまうこと。功を焦って事態を悪化させてしまうたとえだ。「邯鄲学歩」は、戦国時代に趙の都・邯鄲に来た燕国の人が、街を歩く人びとの姿勢が美しくてまねようとしたが、うまくまねできず、自分の歩き方まで忘れて這(は)って国に帰ったという故事だ。

 中国では入学した大学により卒業後の就職先も大きく変わり、人生設計に大きな影響を与える。それだけに受験戦争は過熱で、幼稚園から英語を学ぶなど「受験競争は3歳から始まる」とさえ言われる。小学校でも児童を偏差値の高い学校へ押し込もうと「宿題漬け」にする傾向がある。子どもの成績を落としたくない親は子どもに代わって宿題を解いたり、インターネットで解答者を有料で募集したりすることも珍しくない。

 こうした状況を受けて中国政府は昨年夏、宿題と塾通いの負担を減らす「双減政策」を発表。宿題は学年ごとに上限を設け、民間学習塾は実質、経営ができなくなった。ただ、保護者や教育関係者が「子どもを優秀な学校へ行かせたい」という心理が変わっていないのも事実。今回の卒論問答騒動はそうした現状を象徴していると言える。(c)東方新報/AFPBB News