【7月16日 AFP】メキシコ当局は15日、米麻薬取締局(DEA)の潜入捜査官を殺害したとして米連邦捜査局(FBI)の最重要指名手配リストに挙げられている10人のうち、麻薬組織の大物の身柄を拘束した。DEA捜査官殺害は両国の外交問題にも発展していた。

 ラファエル・カロ・キンテロ(Rafael Caro Quintero)容疑者(69)は、1985年にDEA特別捜査官エンリケ・キキ・カマレナ(Enrique "Kiki" Camarena)氏の拉致、拷問および殺害を指示したとしてFBIに指名手配されている。

 メキシコ海軍は、北西部シナロア(Sinaloa)州でカロ・キンテロ容疑者の身柄を拘束したと発表。米国に引き渡すとしている。

 カロ・キンテロ容疑者はカマレナ氏殺害で1985年に逮捕され、メキシコで裁判にかけられ、禁錮40年を言い渡された。しかし、28年服役した2013年、法的な問題を理由に釈放された。この措置は米当局の怒りを買った。

 その後、メキシコ最高裁が釈放を覆したが、カロ・キンテロ容疑者はすでに行方をくらましていた。

 事件をめぐって両国の関係は極めて悪化。互いの麻薬取締当局の信頼回復には数十年を要した。

 米当局によると、カロ・キンテロ容疑者はグアダラハラ(Guadalajara)にかつて存在した麻薬カルテルの設立者の一人で、現在はシナロアを拠点とする悪名高いカルテルの傘下組織を運営している。2000万ドル(約28億円)の懸賞金がかけられており、FBIは「極めて危険な人物」としている。

 米司法省は15日、同容疑者の身柄を拘束したメキシコ当局に謝意を表し、引き渡しを求める方針を明らかにした。

 メリック・ガーランド(Merrick Garland)米司法長官は「米国の捜査官を拉致、拷問、殺害する者が身を隠す場所はない」と述べた。(c)AFP