【7月23日 AFP】オランダ人のアルテュール・ブラント(Arthur Brand)氏(52)が待ちわびていた荷物が届いたのは、とある金曜の午後10時30分だった。

 チャイムが鳴って玄関のドアを開けると人影はなく、暗がりに段ボール箱が置かれていた。

 箱の中身は、カトリック教会から盗まれた最高レベルの聖遺物。イエス・キリスト(Jesus Christ)の「聖血」が入った箱だった。

「ドキドキしました」とブラント氏はAFPに語った。

 美術調査員として世界的に有名なブラント氏は、「美術界のインディ・ジョーンズ(Indiana Jones)」の異名を取る。これまでに回収した盗難美術品には、ドイツ人の彫刻家ヨーゼフ・トーラク(Josef Thorak)が制作した「ヒトラーの馬」と呼ばれるブロンズ像や、スペインの巨匠パブロ・ピカソ(Pablo Picasso)の絵画、作家オスカー・ワイルド(Oscar Wilde)の指輪などがある。

■真贋は?

 聖遺物箱は、ブラント氏が願っていた通り、無傷だった。

 金色をした銅製の箱で、高さは約30センチ。宝石がちりばめられ、はりつけにされたキリストや聖人の絵が描かれている。箱の中には金属製の容器が二つあり、聖杯に滴ったキリストの血が入っているとされる。

 カトリック教徒の間で1000年以上にわたり崇拝の対象となってきたこの遺物は、フランスのノルマンディー(Normandy)地方のフェカン修道院(Fecamp Abbey)が所蔵していたが、今年6月1日夜から2日未明にかけて何者かに盗まれた。

「おそらく窃盗犯は修道院が閉まるまで中にとどまり、遺物を持ち去ったのでしょう」とブラント氏は推測する。

 ブラント氏の玄関に置かれた段ボール箱の中にはこの他、銅製の聖体皿や装飾が施された杯など、フェカン修道院で盗まれた品々が入っていた。

 AFPでは、いずれの真贋(しんがん)も確認できていない。今後、オランダ警察による鑑定と捜査を経て、フランス警察に返還されることになっている。