【7月14日 AFP】陸上女子走り高跳びのヤロスラワ・マフチク(Yaroslava Mahuchikh、ウクライナ)は13日、以前はロシアのマリア・ラシツケネ(Mariya Lasitskene)と激しいライバル関係にありながらも固い絆で結ばれた友人同士だったが、それもロシアの母国侵攻により一変したと明かした。

 マフチクは欧州室内の現女王だが、昨夏の東京五輪は銅メダル、2019年の第17回世界陸上ドーハ大会(17th IAAF World Championships in Athletics Doha)は銀メダルに終わり、いずれも宿敵ラシツケネに金メダルを譲ってきた。

 そのラシツケネは、母国によるウクライナ侵攻の影響で、15日から始まる第18回世界陸上オレゴン大会(World Athletics Championships Oregon 22)への出場を禁じられている。

 ラシツケネ自身は、ロシアの選手を国際大会から除外するよう勧告したことが「新たな戦争」を生み出しているとして、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ(Thomas Bach)会長を批判し、「ウクライナの選手や家族はどんな人間もすべきでない経験をしている」と話しているが、そうした気持ちもマフチクにはほとんど届いていない。

 侵攻が終息の気配を見せない中、マフチクはロシアの「殺人者」の居場所はないとして、世界陸上を欠場するラシツケネにも一切の同情を見せない。

 マフチクは「2月24日まで私たちは良好な関係にあったし、話もしていた」とロシアが侵攻を開始した日に触れつつ、「だがその日が全てを変えてしまった。彼女(ラシツケネ)は私たちアスリートに何のメッセージも送らなかったのだから」と不満を漏らした。

「逆に彼女は、競技させてほしいとトーマス・バッハにメッセージを送った。私たちの国の人々はウクライナ人だから死んでいるのに」

「トラックの上で殺人者なんて見たくない。この戦争で実際に大勢のスポーツ選手が殺されたのだから」

 3月にセルビアで行われた世界室内陸上選手権(World Athletics Indoor Championships Belgrade 22)では金メダルを獲得し、世界的な注目を集めたマフチク。今回の世界陸上へ向けては「良い結果を出すモチベーションが高まっている」と話し、「ウクライナの人たちに良いニュースを届けられればうれしい」と抱負を口にした。

「精神的には難しいが、私たちは勝って暮らしを取り戻すと信じている。この期間のことはずっと忘れないだろう」 (c)AFP/Luke PHILLIPS