【7月13日 AFP】幼少期に人身売買によって英国へ連れてこられたというショッキングな告白をした陸上長距離の五輪金メダリスト、モハメド・ファラー(Mohammed Farah、英国)に対して、同国の政治家から称賛の声が上がっている。

 英国でとりわけファンに愛され、大きな成功を収めてきた39歳のファラーは、13日に放送される英BBCのドキュメンタリー番組で、本当の名前がフセイン・アブディ・カヒン(Hussein Abdi Kahin)であり、ソマリア難民として両親とともに英国へ移り住んだというこれまでの主張とは異なり、実際は8歳か9歳の頃にそれまで会ったこともない女性とジブチからやって来て、偽の身分を与えられ、別の家庭の子どもたちの世話をさせられていたことを明かした。

 この告白でファラーの市民権にも疑問が生じたが、英内務省によれば問題はなく、担当者は「ファラー氏に対して何らかの措置を取る予定はなく、そうすると示唆するのは間違いだ」と話した。内務省の指針では、両親や保護者が身分を偽って移民の立場を手に入れたことが後に発覚した場合でも、その子どもの責任は問わない。

 11歳のときにクルド人の家族とともにイラクから英国へ移ってきたナディム・ザハウィ(Nadhim Zahawi)財務相はBBCに対し、ファラーの人生の物語を聞いて「胸が痛んだし、つらかった」とコメント。「私に言えるのは、モー・ファラーに敬意を表するということだけだ」と話した。

 野党労働党の重鎮リサ・ナンディー(Lisa Nandy)氏は、口を開くというファラーの決断は他の人身売買の被害者にとっても「状況を一変させるもの」になり得ると話した。

 サディク・カーン(Sadiq Khan)ロンドン市長は、「ファラー氏が生き抜いてきたすべてが、彼が最高のオリンピアンの一人というだけでなく、真に素晴らしい英国人であることを証明している」とコメントした。(c)AFP/Steven GRIFFITHS