【7月12日 AFP】トウブハイイロリスは、1870年代に米国から英国に持ち込まれて以来、英国の森と在来種キタリスの脅威となってきた。英政府は、外来種であるトウブハイイロリスの個体数を減らすため、経口避妊薬を混ぜた餌を与えることを検討している。

 英動植物衛生庁(APHA)は現在、イングランド北部とウェールズの森で、専用の餌箱の実験を行っている。実験に使う餌に経口避妊薬は混ぜられていない。

 実験では、森に生息するトウブハイイロリスの70%が餌箱を使った。餌箱には重り付きの扉がついており、他の動物の侵入をほぼ防ぐことができるという。

 環境・食料・農村省のアドバイザー、ギデオン・ヘンダーソン(Gideon Henderson)氏は、殺すことなくトウブハイイロリスの数を抑制できる可能性が実験により示されたと指摘。「キタリスが本来の生息地で繁殖できるだけではなく、英国の森を守り、生物多様性の拡大にもつながる」と述べた。

 保護団体「キタリス・サバイバル・トラスト(Red Squirrel Survival Trust)」によると、トウブハイイロリス向けの経口避妊薬の研究開発が進んでいる。「効果的な保護管理がなされなければ、各地でキタリスが絶滅に直面する状況が続くだろう」としている。

 APHAの研究者によると、避妊薬は雄雌両方に効果がある。

 英国には現在、270万匹のトウブハイイロリスが生息しており、その数は増え続けている。一方、比較的小型のキタリスは14万匹に上る。

 トウブハイイロリスとキタリスで餌の取り合いとなっている。トウブハイイロリスは、リス痘ウイルスを媒介するが、自身は免疫を持っている。だが、キタリスは免疫がなく、感染すればほぼ死に至る。

 トウブハイイロリスは樹皮を剥ぎ、木を枯らしてしまうため、個体数の増加は若木の脅威にもなっている。

 短期間で繁殖し、急速に個体数が回復するため、通常の殺処分は効果がないことが分かっている。(c)AFP