水中文化遺産を科学技術で守る
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【7月16日 People’s Daily】長さ91メートルのトンネル式エスカレーターに乗り、徐々に水中に入り、146メートルの水平通路を横切り、深さ40メートルの長江水中の見学通路を通ると、長江の真ん中にある中国重慶白鶴梁水中博物館が見える。同博物館は、総投資額1億9300万元(約39億円)で、2009年に正式に開館し、ユネスコ(UNESCO)から「世界初の潜水不要でアクセス可能な水中遺跡博物館」と称されている。
白鶴梁の元の場所は、涪陵区(Fuling)城北の長江と烏江の合流地点にある全長1600メートル、平均幅約15メートルの天然の石梁で、魚の石刻を渇水の目印とする古代における水位観測ステーションとなっていた。梁には165段にわたる刻まれた碑文があり、唐から1200年以上の間に乾期の長江の水文資料を記録し、歴史的著名人の詩の真筆も多数あり、水文科学的価値も高いため、「世界第一の古代水位観測ステーション」と呼ばれている。
三峡ダムに175メートルの水が貯まった後、白鶴梁石刻の川底への水没を防ぐために、2003年に、白鶴梁石刻保護プロジェクトが立ち上がった。「無圧容器」の原理で石刻を元の場所・姿で保護する同プロジェクトは、三峡の文物保護の中で、難易度が最も高く、テクノロジーの使用が最も多く、投資が最も多い文化遺産保護プロジェクトだ。「無圧容器」とは、数十メートルの水中で、石刻のコア部分を覆う、白鶴梁の上に造られた巨大なドームだ。「無圧」を確保するために、ドームの中も水で満たさなければならない。
白鶴梁水中博物館の見学通路の入り口では、2人のプロダイバーが進水前の準備作業をしている。
「3か月の運用ごとに、ドーム内の水の透明度の悪化や、藻の発生、石刻表面の生体膜の繁殖などの問題が発生するため、プロのダイバーによる定期的な清掃が必要だ」と、重慶白鶴梁水中博物館の楊邦徳(Yang Bangde)館長は述べた。
ダイバーは密閉されたガラス製のドーム内を泳ぎまわり、ブロー弁をつけ、排水ホースを利用し、水中と水外の圧力差で、ドーム内の沈殿物を除去している。もう一人は見学窓や照明器具に付着した藻類の生物を拭き取っている。水深が深ければ深いほど、水圧が高くなり、水中作業が難しくなる。そのため、通常は1回の水中作業は1時間以内とし、次の水中作業は24時間後に行うようにする。
「水中照明器具の温度も材質も、水質に影響を与える」。そのため、楊館長はチームを率いて、深水照明システムを常にアップデートしていった。アルミ製照明器具が深水に長時間漬かっていることから発生する物質を減少させるため、素材をアルミからステンレスに変更した。ランプを温白色光から昼光色光に変えることで、水温が下げられ、藻の繁殖が効果的に抑制された。24時間ノンストップ循環システムろ過などの方法の採用により、「今のドーム内の水質は、飲料可能なミネラルウオーターよりも高い水準にある」と、楊館長は述べた。
「石魚出水、以兆豊年(魚の石刻が水面から出てくるのは豊年の瑞)は、涪陵地区に代々伝わることわざだ」と、楊館長は述べた。楊館長の指さした方向に従い、梁の壁にある双鯉石魚(2匹の鯉の石刻)が、ガラス窓越しにはっきりと確認できる。1200年以上前、地元の人々は長江の水位を観察し、一つの規則を導き出した。それは魚の石刻が水面に露出すれば、乾季が過ぎ、豊作の年景が間もなく到来し、翌年は雨が多く、五穀豊穣になることを意味する。楊館長の目には、白鶴梁石刻は水中に隠された千年の歴史を記録した書物だ。(c)People’s Daily/AFPBB News