【7月11日 AFP】ロシア軍が完全制圧に向けて攻勢を強めるウクライナ東部ドンバス(Donbas)地方で、低層の集合住宅がロシア軍の攻撃を受け、少なくとも15人が死亡した。

 地元救急当局によると、ドネツク(Donetsk)州チャソフヤル(Chasiv Yar)の集合住宅が攻撃で倒壊し、10日までにがれきの下から5人の生存者が救出され、15人の遺体が収容された。

 パブロ・キリレンコ(Pavlo Kyrylenko)州知事はメッセージアプリのテレグラム(Telegram)で、集合住宅がロシア軍の多連装ロケット砲「ウラガン(Uragan)」による攻撃を受け、「少なくとも30人が生き埋めになった」と明らかにした。

 救急当局によれば、がれきの下敷きとなっている住民のうち3人から応答があり、救出活動が行われている。

 この集合住宅に住む女性は、破壊された自宅をAFP記者に見せ、「昨夜11時か10時ごろ、寝室から出ようとした途端に雷のような音がして壁に亀裂が入り」、建物が倒壊したと証言した。

 東部ルガンスク(Lugansk)州のウクライナ軍最後の拠点を掌握したロシア軍は、ドンバス地方全体の制圧を目指し、隣接するドネツク州への攻勢を強めている。ウクライナ軍参謀本部は10日、ドネツク州ではロシア軍の地上部隊は進撃をほぼ停止する一方で、砲撃が絶え間なく続いているとしている。

 キリレンコ知事によると、ドネツク州では9日にも砲撃で3人が死亡、23人が負傷した。

 また、北東部のウクライナ第2の都市ハルキウ(Kharkiv)でも、「教育施設」と住宅が攻撃を受けて1人が負傷したと州知事が発表した。

 ウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は9日夜の演説で、ロシアは「間違いなく故意に」住宅地を標的とし、「一般住宅や民間施設、民間人」を攻撃していると非難。「このようなテロ行為は近代的で強力な兵器でしか阻止できない」と述べた上で、米国による追加軍事支援に謝意を示した。(c)AFP/Nicolas GARCIA