【7月14日 People’s Daily】中国山東省(Shandong)黄河デルタ農業ハイテク産業モデル区塩分・アルカリ土壌現代農業試験モデル基地で、実験畑管理人の李瑞田(Li Ruitian)さんが作物の生育状況を確認している。

 数年前まで、彼の足元の肥沃(ひよく)な地は、まだ塩分・アルカリ土壌だった。土壌の塩分濃度が高いため、マツナなど一部の塩性植物を除き、草はほとんど生えることはなかった。

 2009年、中国は塩害荒地の開発・処理を計画的に開始した。翌年、李さんの所在の広北農場は、東営市高効率生態農業モデル区として再編された。2015年10月、中国国務院の承認を得て、黄河デルタ農業ハイテク産業モデル区が設立され、中国で2番目の国家試験農業ハイテク産業試験区となる。ハイテク技術の普及応用、政策的支援により、かつての塩害荒地は、徐々に緑に覆われてきた。

 黄河口では、科学技術の闘いが、静かに繰り広げられていた。李さんは農場の従業員から実験畑の管理人になり、科学研究者が栽培した塩性新品種の世話をするようになった。1万2800ムー(約8平方キロ)の塩分・アルカリ土壌の現代農業試験モデル基地では、黒小麦、キヌア、大豆などの塩性食用作物とウマゴヤシ、オート麦などの塩性牧草を植えた。

「私たちのチームは、質の高い遺伝資源を収集し、塩性植物を選抜・育種するため、黄河デルタの隅々まで足を運んだ」。東営市農業科学研究院塩性植物・生態農業研究所の徐化凌(Xu Hualing)所長の紹介によると、黄河デルタ農業ハイテク産業モデル区は現在、塩性植物の遺伝資源バンクを構築し、地元と国内外の13科、42属、89種の食糧、まぐさ、薬用植物、果物、野菜などの塩性植物の遺伝資源、計1万5000分を集め、後期育種のために強固な基礎を築いた。育種チームは37の新たな品種を初歩的に選抜・育種し、9万2000ムー(約61平方キロ)の実証・普及を行い、1ムー(約667平方メートル)あたり15%から20%の効率アップを実現したという。

「塩分・アルカリ土壌の処理は、水が決め手だ」。中国科学院(CAS)煙台海岸帯研究所黄河デルタ農地生態系フィールド科学観測研究ステーションの王光美(Wang Guangmei)所長は、次のように述べた。微噴帯や点滴灌漑(かんがい)用細管などの節水機器の設置により、土壌の塩分濃度が下がり続け、土質が大幅に改善された。過去3年間で、モデル地区の塩分・アルカリ土壌現代農業試験モデル基地の土壌肥沃度は、おおむね1〜2段階上昇した。王さんのチームはこのほど、実験畑で新たな灌漑実験用の点滴灌漑パイプを敷設しており、3年以内に塩分・アルカリ土壌の塩分濃度を4‰ー6‰から3‰以下に下げ、淡水を38%以上節約できる見込みだ。

 中国国務院の承認により、黄河デルタ農業ハイテク産業モデル区は、国家ハイテク産業開発区の序列に組み入れられ、現行の国家ハイテク産業開発区の政策が実施される。科学研究機関との協力を通じ、同モデル区はスマート農業機械、塩性地種子産業、バイオテクノロジー、益虫資源、塩分・アルカリ土壌生態系観察など、5つのパイロット試験研究開発プラットフォームと、施設農業の試験検証プラットフォームを構築した。現在、同モデル区には、56の科学研究機関の116の専門家チームが集結している。

 中国には15億ムー(約100万平方キロ)の塩分・アルカリ土壌があり、そのうち5億ムー(約33万平方キロ)は開発の潜在力がある。今後、塩性作物の開発は、中国の食糧安全保障に重要な役割を果たし、より多くの塩分・アルカリ土壌が希望を育む豊作の畑に生まれ変わるだろう。(c)People’s Daily/AFPBB News