【7月8日 AFP】テニス、ウィンブルドン選手権(The Championships Wimbledon 2022)の男子シングルスで決勝に進出したニック・キリオス(Nick Kyrgios、オーストラリア)の母親が8日、今年に入ってからの同選手は大きく違っているように見受けられ、「ようやく立ち位置を理解」し、人生を楽しんでいると明かした。

 才能に恵まれている一方で、意見が大きく分かれる存在でもある27歳のキリオスは、準決勝で対戦するはずだったラファエル・ナダル(Rafael Nadal、スペイン)が腹部のけがを理由に棄権したことで、自身初の四大大会(グランドスラム)決勝に進出。

 今年に入り、人生の暗黒期となった2019年には自殺を考えたり、薬物を乱用したり、自傷行為に及んだりしていたのを認めていたことを考えれば、目覚ましい快挙となった。

 うつ状態になったのは、過酷なツアー生活が原因だと明かしていたキリオス。家族と離れたり、自分自身に重圧をかけたりした結果、コート上で頻繁に感情を爆発させたり、罰金を科されたりすることになったと話していた。

 しかし、母のノーライラ(Norlaila Kyrgios)さんは、豪紙シドニー・モーニング・ヘラルド(Sydney Morning Herald)に対し、恋人のコスティーン・ハツィ(Costeen Hatzi)さんがそばにいる中で、キリオスはようやく人生を楽しく過ごし始めていると話した。

「彼はようやく自分の立ち位置を理解しつつある。それが何よりも良いこと」とノーライラさん。「以前は何をやらせるのもとても大変だった。自分の部屋でいつもずっとテレビゲームをして満足していた」という。

「北京に行ったときには、一緒に万里の長城(Great Wall)を観光したかった。誰だってそうでしょう? けれどニックは行こうとしなかった。部屋でデリバリーを注文することが幸せだったから。あれには心配させられた」

「カナダで『ナイアガラの滝(Niagara Falls)に行こう』と言ったのを覚えている。彼はそこにも行こうとしなかった。ニックはそういうことをしたがらなかったのに今は大違い」

「(インスタグラム<Instagram>の)ストーリーを見れば分かる。(1月に行われた)今年の全豪オープン(Australian Open Tennis Tournament 2022)から彼はそういったことをし始めた」

「今の彼は人生がテニス中心に回っていないことを理解している。彼にそうしてほしいとは誰も期待していない。自分の人生を満喫しなければならないのだから。今の彼のことをとてもうれしく思う」

 キャリア最大の大一番となる決勝では、ノバク・ジョコビッチ(Novak Djokovic、セルビア)とキャメロン・ノーリー(Cameron Norrie、英国)の勝者と対戦する。(c)AFP