■ウクライナへの影響

 ロシアの海上封鎖によって、ウクライナでは2500万トン相当の穀物が輸出できず、農場や港のサイロに足止めされ、鉄道や車両で出荷された分は、海上輸送の6分の1にとどまっている。

 また侵攻が続く中、小麦の種まきをする時期を迎えた農家は、防弾チョッキを着て作業したり、地雷などの除去を専門家に依頼したりする必要に迫られた。

 ウクライナの穀物協会UGAによると、今年の小麦の収穫高は前年比40%減と予想されている。

 米国のアントニー・ブリンケン(Antony Blinken)国務長官は、ロシアによる封鎖は「武力による脅しだ」と非難。世界の国々を「屈服」させ、対ロシア制裁の解除を狙うウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領の意図的な戦略だと述べた。

 経済学者のパルマンティエ氏は「戦時下において、生産大国は文字通り他国の運命を握る」と言う。

■今後の見通し

 他の小麦生産大国に目を向けても、中国は在庫を放出する見込みがなく、熱波で不作のインドは輸出を一時禁止している。

 2022~23年度の世界の小麦生産高は約7億7500万トンで、前年度より450万トン減ると、米農務省は予測している。同省は、ウクライナなどでの減産分は、カナダ、ロシア、米国での増産によって「一部」相殺されるとみている。

 だが専門家は、収穫が始まったここ数週間で価格は下落しているものの、市場がウクライナ侵攻の影響を織り込み、不況の懸念が高まっていると指摘している。

 ロシアの黒海封鎖によるウクライナからの穀物輸出停止をめぐり、両国は今週、仲介国トルコで国連関係者を交えて3月以来となる対面協議を実施した。トルコのフルシ・アカル(Hulusi Akar)国防相は、一定の進展があったとし、来週の再協議で最終合意に至る可能性を示唆している。(c)AFP/Sofia BOUDERBALA