【7月16日 AFP】農業大国ウクライナに対するロシアの侵攻は、世界の小麦市場に深刻な混乱をもたらしており、一部の国では飢餓を引き起こしかねないと懸念されている。

■世界の主食

「Feeding Humanity(人類への食料供給の意)」と題する著書がある経済学者のブルーノ・パルマンティエ(Bruno Parmentier)氏は、「小麦は世界中で食べられているが、どこでも生産できるわけではない」と指摘する。

 輸出できるだけの小麦を生産している国も、十数か国しかない。中国は世界一の生産国だが、14億の人口を養うために小麦を輸入している。

 小麦の輸出大国は、ロシア、米国、オーストラリア、カナダ、ウクライナ。輸入国の上位は、エジプト、インドネシア、ナイジェリア、トルコなどだ。

■価格高騰の理由

 穀物価格は、2月にロシアがウクライナ侵攻を開始する前からすでに高騰していた。背景にはいくつかの要因がある。

 まず、新型コロナウイルス流行による打撃から経済が立ち直るにつれ、燃料価格が上昇し、窒素ベースの肥料の価格も高騰した。またコロナ関連規制の解除に伴い、あらゆる製品の需要が急増し、世界のサプライチェーンに大きな混乱を来した。

 さらに昨年の熱波で、カナダでは農作物が壊滅的な被害を受けた。

■ウクライナ侵攻が事態を悪化させた訳

 ロシアのウクライナ侵攻開始後、小麦価格はさらに高騰。5月の欧州市場では1トン当たり400ユーロ(約5万5000円)超と昨夏の2倍となった。開発途上国にとってはあまりにも大きな変化だ。

 侵攻開始前、欧州の穀倉地帯と言われるロシアとウクライナは、世界の穀物輸出の30%を占めていた。また国連食糧農業機関(FAO)によると、30か国以上が小麦の輸入需要の30%を両国に依存している。