【7月7日 AFP】ウクライナが盗難穀物を積載していると主張していたロシアの貨物船が、トルコ北西部カラス(Karasu)港沖の黒海(Black Sea)海域を離れ、ロシア領海内に戻ったことが分かった。トルコ筋が7日、AFPに明らかにした。

 船舶の位置情報などを提供するウェブサイト「マリントラフィック(marinetraffic.com)」によると、貨物船「ジュベク・ジョリ(Zhibek Zholy)」はカラス港から少なくとも20キロ離れた後、追跡を可能にするトランスポンダー(応答機)のスイッチを切り、所在が分からないようにした。

 トルコ筋は、貨物船はロシア領海に入ったものの、まだどこにも入港していないとしている。

 ウクライナ側は、同国から接収した小麦を積載した貨物船が、ロシアが占領するウクライナ南部のベルジャンシク(Berdyansk)港を出港したと主張していた。

 ロシア側はウクライナ政府資産の「国有化」を進め、地元農家からは穀物を購入すると表明している。北大西洋条約機構(NATO)加盟国でありながら、ロシア・ウクライナ両国との関係維持に努めているトルコは、事態の打開を探っていた。

 貨物船の乗組員は匿名で、ロシア国営タス通信(TASS)に対し、「金銭的な損失を回避する」ため、積載している穀物を他の船舶に積み替える予定だと語った。

 トルコ政府は、貨物船がカラス沖に先週到着して以降、公式な声明を出していなかった。

 ウクライナ外務省は声明で、「ウクライナからの要請を無視して、貨物船は7月6日に解放された」との失望感を表明するとともに、駐ウクライナ・トルコ大使を外務省に呼び、貨物船解放についての説明を要求した。声明の中で、拿捕(だほ)するよう要請したことが実行されず、「深い失望」を示した。

 ウクライナ外務省報道官はツイッター(Twitter)に、「盗んだウクライナの穀物を満載していたロシア船ジュベク・ジョリが、トルコ当局に犯罪の証拠を提供したにもかかわらず、カラス港から出航するのを認められたのは遺憾だ」と投稿した。(c)AFP