【7月10日 AFP】北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong Un)総書記は韓国に対し、ソウルを火の海にすると威嚇してきたが、その韓国には、おそらく本人が認めたがらない深いつながりがある。

 リゾート地として有名な韓国の済州(Jeju)島には、正恩氏の母、高(コ)ヨンヒ(Ko Yong Hui)氏の親族の墓石が13基ある。

 正恩氏は金一族3代目の北朝鮮統治者であり、その血筋は公式の偉人伝で「白頭血統」と呼ばれている。

 しかし、済州島の墓からは全く違う過去が見えてくる。

■大阪で生まれた正恩氏の母

 正恩氏の母親は1952年に大阪で生まれた。家族は済州島出身で、朝鮮半島が日本の植民地だった1929年に日本に移り住んだ。

 2011年に金正日(キム・ジョンイル、Kim Jong Il)総書記が死去し、息子の正恩氏が政権を握ると、多くの専門家が母方には韓国や日本とのつながりがあると指摘した。だが、北朝鮮政府が認めたことはない。

 世宗研究所(Sejong Institute)北朝鮮研究センター(Center for North Korea Studies)の張成昌(Cheong Seong-chang)氏はAFPに対し、「認めれば、政権の正統性が損なわれることを恐れたのでしょう」と話す。

 金政権は、正恩氏の祖父・金日成(キム・イルソン、Kim Il Sung)国家主席が抗日ゲリラとして日本と戦い、1945年に独立を勝ち取ったという主張を権力の正統性の根拠としている。そのため、「韓国や日本とのつながりは、北朝鮮の指導者神話に異議を唱えることになる」と張氏は指摘する。