■「ガスマスク」が役立つことも

 だが時には厳しい現実に直面する。「最悪の仕事」は、数週間電気が途絶えた冷蔵庫や冷凍庫の腐った食べ物の片付けだ。

「あまりにひどい臭いで気絶しそうになる」と話した。誰かがくれたソ連時代のガスマスクを重宝しているという。

 ロシア軍による犯罪行為の象徴となっているブチャで、エルピティフォロフさんは新築アパートの前に駐車した。ほとんどの窓ガラスは爆風で吹き飛ばされている。

 このアパートの一室では植物に水やりをするとすぐに立ち去った。部屋に残る侵攻の痕跡は、ロシア兵が壁に書いた「ドアを壊して悪いね」というメッセージだけだ。

 屋根が吹き飛ばされた学校を見下ろすイルピンのアパートでは、スマートフォンで鉢植えの植物の動画を撮った。外国にいる持ち主に動画を見せるためだ。

 次に立ち寄った家では、作業員らが壁の焼け焦げた家に新しい屋根をかけていた。エルピティフォロフさんは足を止めると、炎で激しく焼かれた常緑樹の若木を手入れした。

 この木とウクライナの人々が重なるという。「片側は焼けてしまったが、もう片側には成長し続ける強さがある」 (c)AFP/Ania TSOUKANOVA