【7月31日 AFP】荒野のゴーストタウンに武装した男たち…西部劇と見間違えそうな光景だが、ここは北極圏に位置するノルウェー領スバルバル(Svalbard)諸島。その3000人余りの住民のために、同諸島最大のスピッツベルゲン(Spitsbergen)島では、わずか12人の警官が日夜スノーモービルやヘリコプター、ボートで奔走している。

 中心都市ロングイェールビーン(Longyearbyen)のスタイン・オラブ・ブレドゥリ警察署長によると「ほとんどの事件はささいなもの」だという。

 スバルバル諸島には、ホッキョクグマにちょっかいを出したり、海氷を割ったりすれば罰せられるという独自の法律がある。ホッキョクグマに手を出した場合は、1500ユーロ(約20万円)の罰金刑が科される。

 最も多いのは、ちょっとした窃盗事件やスノーモービルの事故だ。ごくまれに薬物絡みで逮捕者が出ることもある。

 しかし、住民らはしっかりと武装している。ホッキョクグマとの遭遇に備え、市街地から離れる際にはライフルの携行が義務付けられているのだ。1971年以降、6人がホッキョクグマに殺されている。

■逃げ場なし

 地元紙スバルバルポステン(Svalbardposten)のボレ・ハウグリ氏は、編集長だった2年の間に1度だけ車の盗難事件を報じたと話す。「パーティーの帰り道、酔っ払いが鍵のついたままの車を見たのでしょう」

 地元住民は家にも車にも鍵をかけない。急いでホッキョクグマから逃げなければならないケースを想定しているのだ。だがこれは、過酷な環境で生活する住民同士の信頼感の表れでもある。

 道路は全長40キロしかなく、外界とのつながりはロングイェールビーン郊外にある小さな空港だけ。しかも、ロングイェールビーンまでは道路がなく、船での長時間移動が必要となる。つまり窃盗犯にとって逃げ場はないのだ。