【7月13日 AFP】インドの「ダイヤモンドの都」と知られる西部グジャラート(Gujarat)州スーラト(Surat)。ロシアによるウクライナ侵攻は、インドの宝石研磨業界に大打撃を与えた。全国に200万人いる宝石研磨職人の一人ヨゲーシュ・ザンザメラさん(44)も、その影響を受けた。

 スーラトにあるザンザメラさんの作業場では35~40人が働いている。だが、トイレは一つしかなく、部屋には悪臭が漂う劣悪な環境だ。肺の病気や視力悪化などのリスクにも直面している。

 しかし、ザンザメラさんら職人が今最も懸念しているのは、遠く離れた欧州での戦争とそれによる対ロシア制裁だ。インドにとってロシアは、ダイヤ「原石」の最大の供給国となっており、戦略的に提携してきた。

 ザンザメラさんは、スーラトの作業場でAFPの取材に応じ「ダイヤが不足している。そのため仕事もあまりない」と語った。2万ルピー(約3万4000円)あった月給は、すでに20~30%カットされているという。

 地元の労働組合は、スーラトのダイヤ関連業界の労働者のうち、3万~5万人が失業したと推測している。

 スーラトは1960年代から70年代にかけ「インドのダイヤモンドの都」として知られるようになった。

 世界のダイヤの約9割は現在、スーラトなどグジャラート州内でカット・研磨されている。

 スーラトの混雑するマヒーダルプラ(Mahidharpura)市場では毎日、数百万ドルの価値がある貴重なダイヤが、包装紙に無造作に包まれ、路上で取引されている。

 インドへの原石の供給は、世界最大のダイヤ採掘会社アルロサ(Alrosa)などロシア企業がこれまで3分の1を占めていた。だが、ウクライナ侵攻を受けた西側諸国の対ロ制裁により、供給はほぼ停止している。

 チラグ・ジェムズ(Chirag Gems)が150~15万ドル(約2万~2100万円)の値で販売している宝石の、原石900個の半数はロシアのものだ。

 同社は、最新鋭のスキャン装置とレーザー加工機を使用している。研磨職人が危険なほこりを吸い込まないよう、空調と換気システムも備えている。

 西側諸国が制裁の一環で、ロシアを国際銀行間通信協会(SWIFT、スイフト)の決済網から排除した3月以降、原石の供給は10分の1に縮小した。

 同社のチラグ・パテル最高経営責任者(CEO)は、ロシアから減った分を南アフリカやガーナからの輸入で補いたいと考えている。