【7月2日 AFP】米グーグル(Google)は1日、プライバシーの保護が求められる中絶クリニックやドメスティックバイオレンス(DV)被害者の保護施設などをユーザーが訪れた場合、ロケーション(位置情報)履歴を削除する方針を発表した。

 グーグルのシニアバイスプレジデントのジェン・フィッツパトリック(Jen Fitzpatrick)氏は、「わが社のシステムで、ユーザーがこうした場所を訪れたと確認された場合、訪問直後に位置情報の履歴を削除する」とブログに投稿。数週間以内に新方針を適用するとしている。

 履歴から削除される場所は他に、不妊治療センター、依存症の治療施設、痩身(そうしん)専門のクリニックなど。

 米連邦最高裁判所がこのほど、女性の人工妊娠中絶を憲法上の権利と認めた1973年の「ロー対ウェイド(Roe v. Wade)判決」を覆す判断を下したことを受け、中絶の権利を訴える活動家や政治家はグーグルをはじめとするIT大手に対し、中絶をめぐる捜査や訴追でユーザー情報が利用されないよう対策を求めている。

 スマートフォンのデータと中絶の権利をめぐる懸念が取りざたされるようになったのは連邦最高裁の判決以前からで、この数か月、保守的な州では、中絶処置を施した医師や、中絶をほう助した人を告訴する権利を市民に認める法案が相次いで可決されている。

 そのため、民主党議員は今年5月、グーグルのスンダー・ピチャイ(Sundar Pichai)最高経営責任者(CEO)に書簡を送り、「リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)関連の医療を求める人々を弾圧しようとする極右の過激派勢力の道具」として利用されないよう、スマートフォンの位置情報の取得停止を要請していた。(c)AFP