【7月1日 AFP】ロシアが侵攻したウクライナで外国人部隊のメンバーとなった戦闘員たちは、戦争の残忍さにショックを受けており、予想していた状況とは違うとの戸惑いも広がっている。

 外国人部隊に参加した西側出身のポラックさんは、ウクライナで実際に起きていることに直面し、「アフガニスタンやイラクで戦ってきた連中が、準備ができていないと言っている」と話す。

 ポラックさんはウクライナ東部ドネツク(Donetsk)州クラマトルスク(Kramatorsk)にあるカフェでAFPに対し、「正直に言えば、われわれの部隊には相当な数の臆病者がいる」と語った。「時には、初めての交戦を経験した後、『あんな状況には対処できない』と言って去る人もいる」という。

 ポラックさんは、外国人部隊に「カナダやジョージア、クロアチア」など幅広い国の出身者が参加していることをうかがわせた。ただ、多くは砲撃を含むような戦争を想定した訓練は受けていない。

■「最悪」の戦争

「イーロン・マスク(Elon Musk)よ、聞こえるか。われわれには助けが必要だ」。北東部ハルキウ(Kharkiv)で任務に就く元米兵は記者会見で、世界一の富豪マスク氏を名指ししてこう訴えた。

 最近、オランダ、フランス、ドイツ、オーストラリア出身者がそれぞれ1人死亡し、外国人部隊が直面している現実が浮き彫りになっている。ロシアは6月初め、「外国人傭兵(ようへい)数百人」を殺害したと主張している。

 外国人部隊のフランス人スポークスマン、ダミアン・マグルー(Damien Magrou)氏(33)は、部隊の多くのメンバーが戦闘現場での残虐性にたじろいでいる実態を認めた。

 マグルー氏は「過去に6回も戦争を経験した米国人が、今まで見た中で最悪の状況だと言った」と話す。

 さらに「ミサイルや砲撃など、彼らが予想していたと思われる状況とは大きく異なる」と指摘し、部隊の10〜30%のメンバーが前線に派遣される前に元の生活に戻ったと明らかにした。メンバーは、ウクライナ軍と契約を交わしているものの、いつでも離脱可能だ。

 外国人部隊の構成について、「ほぼすべての志願者が元兵士で、3分の1は英語圏から来ている」とマグルー氏は述べた上で、「米国人は自由や西側の価値観を守るために戦い、ポーランド人は自国防御にもつながるため、ウクライナを守りたいと話している」と説明した。

 ハルキウでAFPのインタビューに応じたドイツ人のミカさんは「テレビで映像を見て、ここに来たいと思った」と打ち明けた。そして、「軍隊にいたので役に立てるのではと考えた。ウクライナへの侵略者を阻止しなければ、別の国々が次々と侵略されることになる」との危機感を訴えた。

 外国人部隊の中には、イタリアや韓国の出身者のように、「訴追される危険を承知の上で」参加している人もいる。

 ただ、マグルー氏の状況は若干違う。首都キーウの法律事務所で2年間働いており、自ら戦地に赴いたというよりも、戦争の方が同氏に降り掛かってきたのだ。

 AFPがキーウ中心部の街頭で、軍服を着たマグルー氏を取材していると、高齢の女性が手を振った。同氏は「ウクライナの人たちから感謝されており、食料を頂戴したり、われわれの行動に感謝の気持ちを示されたりする」と話した。(c)AFP/Anna MALPAS, with Blaise GAUQUELIN