【7月1日 AFP】タイの首都バンコクで、受刑者が汚物にまみれながら、2年ぶりの下水管掃除に精を出す。手には汚物であふれんばかりになったバケツを持っている。

 海抜わずか1.5メートルのバンコクでは、洪水が頻繁に起こる。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)以前は、排水が滞らないようにするための下水管掃除に受刑者が動員されていた。

 だが、新型コロナ感染拡大の懸念から、パンデミック後は市当局が下水管掃除を行っていた。

 ある受刑者(33)は「すごく大変で、疲れる仕事だ」「臭いがひどい」と語った。水色の野球帽と紺色の作業着を着た受刑者は「それでもこの作業をしたい。そうすれば、早く家に戻って家族に会える」と述べた。

 バンコク東郊での下水管掃除のため、3か所の刑務所から約80人が駆り出された。1日作業すると刑期が1日短縮され、賃金も支払われる。

 コンクリート製のふたを開け、胴長と作業用手袋を着用した受刑者が下りて行く。汚れをかき集め、大きな鉄製のたらいに入れる。

 一日中続く作業は、店の前の下水管がついにきれいになったと喜ぶ店主らの寄付によって支えられている。

 匿名で取材に応じたバンコク特別刑務所(Bangkok Remand Prison)の看守によると、受刑者が下水管掃除をしたのは新型コロナの流行以来、初めて。

 かつて「東洋のベネチア」とうたわれたバンコクは、7~10月の雨期の間、洪水に悩まされている。

 バンコク都庁の担当者は「雨期の初めに清掃を増やすことで、下水管(の排水)がよくなる」と説明した。

 ある受刑者は、下水管掃除が過去に対する償いのような気持ちになっていると話す。「わたしたちは過ちを犯して刑務所に入った」「外に出て社会支援ができ、とても良い気分だ」 (c)AFP