【7月2日 AFP】米航空宇宙局(NASA)のビル・ネルソン(Bill Nelson)長官は6月29日、新たに運用が開始されたジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(James Webb Space Telescope)による「これまでに撮影された最も深遠な宇宙の画像」を今月12日に公開すると発表した。

 ネルソン長官は会見で「人類がこれまでに目にしたことのある範囲よりもさらに遠くだ」と述べた。100億ドル(約1兆3500億円)を費やして製造されたウェッブ宇宙望遠鏡は、昨年12月に打ち上げられ、現在は地球から約150万キロ離れた軌道で太陽を周回している。

 工学技術の粋を集めたウェッブ宇宙望遠鏡は、口径6.5メートルの巨大な主鏡と、塵(ちり、固体微粒子)やガスを透過できる赤外線に特化した観測機器を備えており、これまでのどの望遠鏡よりも遠くまで宇宙を観測することができる。

「太陽系内の天体や、太陽以外の恒星を周回する系外惑星の大気を調査する予定だ。系外惑星の大気が地球の大気と類似している可能性があるのかという問いへの手掛かりが得られる」と、ネルソン長官は続けた。

「現在ある疑問のいくつかに答えを出せるかもしれない。われわれはどこから来たのか、宇宙には他に何かいるのか、われわれは何者なのかといった疑問だ。そして、まだ存在すらしていない未来の疑問への答えも提供してくれるだろう」

 ウェッブ宇宙望遠鏡の赤外線観測機能は、138億年前に起きたビッグバン(Big Bang)へ向かって時間の流れをさらに遠くまでさかのぼる観測を可能にする。

 宇宙は膨張しているため、最初期の恒星からの光は、放射された際の紫外・可視光波長から、より長い赤外線波長へと変化する。ウェッブ宇宙望遠鏡はこの赤外光を、かつてない高分解能で検出する機能を備えている。

 現在観測できる最も初期の宇宙は、ビッグバンから約3億3000万年後のものだが、ウェッブの観測能力はこの記録を容易に打ち破ると天文学者らは考えている。

 NASAは、ウェッブ宇宙望遠鏡による初の系外惑星の分光観測結果も同じく12日に公表する意向だ。(c)AFP/Issam AHMED