【7月5日 AFP】テニスの四大大会(グランドスラム)、ウィンブルドン選手権(The Championships Wimbledon)でコート責任者を務めるニール・スタブリー(Neil Stubley)氏は、現代技術を駆使して大会特有の環境を再現し、グラス(芝)コートのテニスを世界に広げるという使命を担っている。

 現在、プロ選手がグラスコートでプレーできるのは1年のうちわずか数週間で、ツアーの大多数はハードコートとクレーコートの大会が占める。

 その中で、ウィンブルドンのみずみずしい芝を最高の状態に保つ役割を任されているスタブリー氏は、英国とオーストラリアで、合成繊維と芝を組み合わせることでコートの状態を改善する試験的な取り組みに携わっている。

「グラスコートでとりわけ難しいのは、かなりの重埴土が必要な点だ。それを完全に乾燥させ、ボールが弾むようにする必要がある」とスタブリー氏。「英国には、そうした構造の埴土の土壌がもともと豊富にあるのに対し、世界では石灰質と砂質の土壌が大半で、英国ではごく普通に見つかる土壌が非常に見つけにくい国がある」と話す。

 しかしそうした砂がちな土地でも、合成繊維を使った「グラススティッチング」の技術を使えば、コートの安定性と反発力を高められるという。

 ウィンブルドンで30年近く働いてきた経験を持つスタブリー氏は「芝のテニスを世界的に普及させたい。ウィンブルドンだけでなく、夏芝か冬芝かに合わせて世界のどの国でも大会を開催できるようにしたい」と、グラスコートテニスの普及に情熱を燃やす。

「バミューダ芝など、南半球の芝についてはかなり研究が進んでいて、実際に製品化できるところまで来ている。適切な深さに根を張り、適切な芝が生える、ウィンブルドンのコートと同じ特徴を備えた製品だ」

「もっと水はけのいい土壌が手に入れば、実際にグラスコートシーズンを4週間から6週間延ばし、一般の人たちにとってグラスコートでプレーする魅力を高められるかもしれない」

 もっとも、スティッチング技術をウィンブルドンのコートに今すぐ使う予定はないという。スタブリー氏は「スティッチのシステムは、世界のグラスコートテニスを改善するものだろう」と話し、「ウィンブルドンは別だと思う」と続けた。

「世界中に質を改善したグラスコートを用意できるところまでは来ている。ここからは、ジュニアの選手にもっと芝に親しんでもらい、プロに転向した後も不慣れということがないようにする方が課題だ」 (c)AFP/John WEAVER