【6月25日 AFP】イラク西部の砂漠の端に立つ「釣り禁止」の標識。この場所がかつては湿地帯で多様な生物が生息し、行楽地としても知られたサワ湖(Sawa Lake)だったことを示すわずかな手掛かりの一つだ。 

 砂岸に囲まれた塩湖は、1990年代のピーク時には水泳やピクニックを楽しむ新婚カップルや家族連れでにぎわっていた。だが、当時のホテルや観光施設は今や廃虚となっている。

 首都バグダッド南方のサマワ(Samawa)市に近いサワ湖は現在、ほぼ完全に干上がっている。人的活動と気候変動が、大量の塩に覆われた不毛の荒れ地に変えてしまったのだ。

 塩をまぶしたような砂地に残っているのは、地下水面とつながる、小さな魚が泳ぐ池一つだけだ。

 ムサンナ(Muthanna)州の環境局長ユセフ・ジャバー(Youssef Jabbar)氏によると、約5キロ平方メートルあった湖は「気候変動と気温上昇」が原因で、2014年から水位の低下が続いている。加えて政府は最近、農業用に掘られた「違法な井戸が1000か所以上に上る」と指摘した。

 さらにジャバー氏によると、近くのセメント工場や製塩工場が「湖に流れ込む地下水から大量の水を引いている」という。

 砂漠化に見舞われ、気候変動の影響を最も受けやすい5か国の一つに数えられているイラクでは、サワ湖が息を吹き返すのは奇跡以外にないだろう。地域一帯は3年続いた干ばつの後で数シーズン分の豊富な雨が必要であり、地下水の使用は抑制しなければならない。

 スウェーデンに長年住んでいるサマワ市出身のラティフ・ディベス(Latif Dibes)さんはこの10年、環境活動家として二つの国を行き来している。ユーフラテス川(Euphrates River)の岸辺を清掃し、広大で緑豊かな自宅の庭園を公共の公園に変えた。

 ディベスさんは、子どものころ、遠足や家族との休暇でサワ湖に泳ぎに来たときのことを覚えている。「当局が関心を寄せていれば、湖はこんなに速く消失しなかったでしょう。信じられません」

「この湖で育ってきた私は今、60歳です。私の方が先にいなくなると思っていましたが、残念なことに、湖の方が先にいなくなってしまいました」

 映像は4月に取材したもの。(c)AFP/Tony GAMAL-GABRIEL