【6月25日 東方新報】中国では最近、Z世代(1995年以降生まれ)を中心にキャンプがブームとなっている。これまでキャンプはマイナーなレジャーだったが、コロナ禍で閉塞(へいそく)感が続く都会を離れ、解放感に浸れるのが人気となっている。

 中国東部の浙江省(Zhejiang)寧波市(Ningbo)に住む20代前半の会社員、劉維(Liu Wei)さんは、市内の象山県(Xiangshan)の海岸で友人と週末を過ごすことが増えている。昼はヨットを楽しみ、夜はバーベキュー。星を眺めながら会話を楽しみ、レンタルのキャンピングカーで波の音を聞きながら就寝する。

 劉さんは「都会ではいちいちスマホの健康コードを見せないと移動もままならない。省をまたぐ旅行はPCR検査の証明書が必要。近場にある自然の中でプチキャンプする魅力にたどりつきましたよ」と笑みを浮かべる。

 今年は4月の清明節連休(3~5日)、5月の労働節連休(4月30日~5月4日)、そして6月の端午節連休(3~5日)の時期、通販サイトではテントや寝袋、ランプ、折りたたみいす・テーブルなどが飛ぶように売れ、キャンプ専門店では一部商品の品切れ状態が続いた。

 キャンプブームの要因として、まずは若者の経済力が向上したことが挙げられる。従来のキャンプと一線を画し、金をかけて快適さを重視する「グランピング」が流行。グラマラス(魅力的)とキャンプを組み合わせた言葉で、アウトドアブランドは1万元(約20万円)のテントや600元(約1万2072円)のマグカップなど、品質と見た目に優れた高級品に力を入れている。

 また、ショッピングサイトの淘宝(タオバオ、Taobao)などがまとめた「Z世代キャンプ白書」によると、「キャンプ式コミュニケーション」が若者をひきつけているという。キャンプを観光の目玉にしている地域では、キャンプファイアやダンスパーティーなどで見知らぬ観光客同士が触れ合うイベントを展開している。1人っ子が多く、人間関係が固定されがちなZ世代にとって、こうした交流は新鮮な体験という。

 グランピング施設「大熱荒野(Dare Glamping)」は、キャンプ初心者が「手ぶら」で豪華なキャンプが楽しめるサービスを展開。トイレやシャワー完備のキャンプ場でテントの設営体験からアフタヌーンティー、ディナー、キャンプイベントなどの1日体験プランが1人約800元(約1万6097円)で楽しめる。

 市場調査会社「艾媒諮詢(iiMedia Reserch)」によると、中国のキャンプ市場は2020年に168億元(約3380億円)に達し、2023年には417億元(約8390億円)に急増する見込みという。一定規模のキャンプ場は年間の維持費が100万元(約2012万円)以上かかる上、コロナ禍が収束すればキャンプ場同士の集客合戦が厳しくなる予測もある。ただ、欧米や日本に比べ中国は人口あたりのキャンプ場がまだ圧倒的に少ないため、業界の「伸びしろ」は高いとみられている。(c)東方新報/AFPBB News