【6月23日 AFP】ウクライナ南東部の港湾都市マリウポリ(Mariupol)にあるアゾフスターリ(Azovstal)製鉄所は、ロシア軍の猛攻に数週間耐え抜き、ウクライナの抵抗の象徴となった場所だ。今は、焼け落ちた鋼材やコンクリート片が山を成す廃虚と化している。

動画:ウクライナ・マリウポリの製鉄所 被害の様子捉えた空撮映像

 マリウポリ防衛隊は、製鉄所の地下にある入り組んだトンネルに身を隠して最後の抵抗を試みたが、5月に投降した。

 ソ連時代に建設された工場は、一時は1万2000人以上を雇用し「マリウポリの誇り」と見なされた。現在ここを巡回するのは、ロシア兵と親ロシア派武装勢力の戦闘員だ。

 ロシア国防省は、製鉄所の内部を報道陣に公開するプレスツアーを実施した。AFPもこれに参加し、甚大な被害を受けた構内に最初に足を踏み入れたメディアの一つとなった。

 報道陣は、迷路のような地下トンネルへと案内された。ロシア軍による激しい攻撃を受けながら、ウクライナ側の防衛隊と民間人合わせて数百人が何週間も潜伏していた場所だ。

 これらのトンネルや地下壕(ごう)は冷戦(Cold War)期に、万一核攻撃を受けても作業員を守れるように設計され、一帯に張り巡らされた。

 ある暗い部屋では、マットレスのない金属製の2段ベッドや床に、所持品や衣服が慌てて放り出されたような格好で残っていた。地面には薬きょうが散乱し、テーブルの上には包帯やコップ、皿のほか、戦死者とみられる複数の兵士の写真も置かれていた。

 プレスツアーの案内役はこれらの部屋について、元準軍事組織でウクライナ軍に統合された「アゾフ連隊(Azov Regiment)」の戦闘員が使用していたと説明した。同連隊についてロシア側は、過去に極右団体と関係があった「ネオナチ(Neo-Nazi)組織」だと断じている。

 トンネルに続く階段の壁には、ナチス・ドイツ(Nazi)のシンボル「黒い太陽(Black Sun)」に似た落書きがあった。誰が書いたのかは不明だ。