■中心的役割

 2017年に救急ヘリコプター操縦士を辞職して以降、ウィリアム王子は専ら家族のために時間を割いてきた。

 報道によれば、ロンドンのケンジントン宮殿(Kensington Palace)を出て、女王がほとんどの時間を過ごすウィンザー城(Windsor Castle)の敷地内に引っ越す計画がある。新居は寝室四つの質素なコテージとされるが、これにより女王との距離が縮まり、ウィリアム王子の王室内での役割が強化されると識者は見ている。

 王室の務めに力を入れる一方、3人の子どもたち、長男ジョージ王子(Prince George、8)、長女シャーロット王女(Princess Charlotte、7)、次男ルイ王子(Prince Louis、4)には普通の生活をさせようと決めている。

 背景には、自身が幼少期に両親の別居と離婚に傷つき、15歳で母ダイアナ元皇太子妃(Princess Diana)を自動車事故で亡くした経験がある。王室の慣例を破り、おむつ交換や宿題の手伝いをするなど父親としてより現代的な考え方をするようになったのは、明らかに母ダイアナ元妃を模範としている。

 社会で最も弱い立場の人を助けるという元妃の遺志を継ぐことにも熱心だ。今月初めにはロンドンで、英国発祥のホームレス支援の雑誌「ビッグイシュー(Big Issue)」を販売しているところを目撃された。環境問題やメンタルヘルスについても頻繁に発言している。

■ダイアナ元妃の影響

 英王室に関する複数の著書があるマルク・ロシュ(Marc Roche)氏はAFPに対し、ウィリアム王子はイートン校(Eton College)で学んでいた間、日曜日には近くのウィンザー城でエリザベス女王と昼食を共にしていたと説明。その際に「伝統的な」女王によって「型にはめられた」ものの、「恐らくは母親の影響で、多様性と環境に関して豊かな感受性を有していることが強みとなっている」との見方を示した。

 ウィリアム王子が英王室の内情を表に出すことはほとんどない。だが、弟ヘンリー王子(Prince Harry)と妻メーガン妃(Meghan, Duchess of Sussex)が米テレビで王室内の人種差別を告発した際は、王族を擁護し疑惑を強く否定。兄弟間の確執の元となった。

 ただ、ウィリアム王子は旧態依然とした王室を近代化し、若年層の間で共和主義が広がりつつある中で、エリザベス女王亡き後も君主制を存続できるようにする必要を認識している。

「ウィリアム王子が特に気に掛けていることの一つは、君主制のイメージとその進め方だ」とフィッツウィリアムズ氏は述べた。(c)AFP/Martine PAUWELS