【6月20日 AFP】ココヤシの胚乳を浸した「ココナツウオーター」でがんが治ると主張するフェイスブック(Facebook)の投稿記事が、スリランカで拡散している。

 がん治療の専門機関であるインドのタタ記念病院(Tata Memorial Hospital)によるアドバイスだとされている。だが、専門家はAFPに対し、信頼できる科学的裏付けはないと指摘。病院側も前回同じ主張があった時に「偽のメッセージ」だと否定している。

 今月1日にフェイスブックに投稿された問題の記事には、「温かいココナツウオーターが、がん細胞を分離して殺す!」とシンハラ語で書かれている。

 記事は、ココヤシの胚乳を数片、温水に浸してできたアルカリ性の水を毎日飲めば、誰にでも効果があると主張。「この混合飲料は、がん細胞を殺す能力を持つ物質も放出する。がん治療における最新の発見だ」としている。

 記事ではこれを、タタ記念病院のラジェンドラ・バドウェ(Rajendra Badwe)博士の助言だとしている。

 フェイスブックの他、メッセージアプリのワッツアップ(WhatsApp)でも全く同じ内容の記事が拡散されている。

 スリランカ腫瘍医協会(Sri Lanka Oncologists Association)のA・J・ヒルミ(A.J.Hilmi)元会長は10日、「この主張には信頼できる科学的根拠がない」とAFPに語った。

「このような主張により患者が医師の処方に基づく治療をやめ、こうした代替法を選ぶという被害が生じる。時には致命的な結末を迎える恐れがある」

 英王立がん研究基金(Cancer Research UK)の広報担当者アリス・ウィルソン(Alice Wilson)氏もAFPに対し、科学的根拠のない主張だと指摘。「がん患者があらゆる選択肢を検討したいと望むのは十分理解できる。しかし、補完代替療法の使用を考える際は、必ず主治医に相談することが肝要だ」と述べた。

 同様の主張は以前から出回っている。タタ記念病院は2019年5月18日、「これは偽のメッセージで、バドウェ博士もタタ記念センター(Tata Memorial Center)も同意していない見解だ」とフェイスブックで発表。「あらゆる種類のがんについて、温かいココナツウオーターで治癒できると示唆するデータは存在しない」と警告している。

 この発表は、インドの新聞でも報じられた。(c)AFP