【6月17日 AFP】14世紀に流行した黒死病(ペスト)の起源をキルギスの一地域に特定したとする研究論文が15日、英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された。

 黒死病は、500年近く続いたペストの世界的流行の第1波につけられた名称で、1346~53年のわずか8年間で欧州と中東、アフリカの人口の最大6割が犠牲になったと推定されている。発生源ははっきりせず、数世紀にわたり議論が続いていた。

 論文を発表した研究チームの一員で、英スターリング大学(University of Stirling)の歴史学者であるフィリップ・スラビン( Philip Slavin)准教授は、現在のキルギス北部にある14世紀の墓地について書かれた1890年の論文に手がかりを発見した。論文によると、同地域では黒死病流行の7~8年前に当たる1338~39年に埋葬が急増。複数の墓碑には「疫病で死亡」と記されていた。

 スラビン氏は埋葬された人々の死因を探るべく、古代のDNA分析を専門とする研究者と協力。AFPの取材に応じた論文の筆頭著者、独テュービンゲン大学(University of Tuebingen)のマリア・スピロウ(Maria Spyrou)氏によると、埋葬されていた7人の歯からDNAを採取し、数千種類の微生物遺伝子と比較したところ、ペスト菌であることが判明した。

 黒死病の流行は、げっ歯類に寄生するノミにより運ばれるペスト菌が突然多くの系統に分岐した「ビッグバン」と呼ばれる現象により始まったとされる。この現象は早くて10世紀にも起きていたとみられていたが、具体的な時期ははっきりしていなかった。

 研究チームは、採取したサンプルからペスト菌の遺伝子を解析し、菌の系統が分岐前のものであったことを特定。周辺地域に現在生息するげっ歯類からも同じ系統の菌が見つかったことから、「ビッグバン」がこの地域で黒死病流行の直前に起きたと結論付けた。(c)AFP/Sara HUSSEIN