【6月16日 東方新報】中国東北部の吉林省(Jilin)農業農村局の劉文国(Liu Wenguo)副局長は6月2日、「特産のニンジン(高麗人参)が食品や医薬品、化粧品、ヘルスケア製品などに幅広く用いられるよう支援し、10年間で1000億元(約2兆円)産業に発展させる」と表明。吉林省が世界最大の生産地でありながら、国際市場では存在感が低い状況を打破しようとしている。

 疲労回復や滋養強壮に効能があるといわれ、漢方薬や食用に使われる高麗人参。中国では単に「人参」と呼んでおり、一般的なニンジンは「胡蘿卜(Huluobo)」と言う。「漢方薬の王」と言われる高麗人参の一大産地が吉林省で、生産量は中国全体の60%、世界全体でも40%を占める。2021年の生産額は600億元(約1兆2014億円)。輸出量はトウモロコシに次ぎ、吉林省にとって外貨獲得の目玉商品となっている。

 しかし、中国医学科学院薬用植物研究所の孫暁波(Sun Xiaobo)所長は「わが国のニンジン生産量は世界全体の6割を占めるのに、貿易額は2割に満たない。高級品市場は韓国、日本、欧州に占められている」と指摘する。中国は原材料として輸出し、海外企業が加工や精製をする形が多いためだ。

 このため、吉林省は省をあげて高麗人参産業振興プロジェクトに着手。栽培農家への技術指導をきめ細かく行い、高麗人参の開発・加工を行う企業を誘致した「高麗人参ハイテク技術産業園」の設立、吉林大学(Jilin University)や吉林農業大学などで高麗人参の専門研究チームの結成など、産・官・学が一体となって取り組んでいる。データセンターやコールド輸送、スマート倉庫などを導入した物流システムの改善、インターネットを活用した販売ルートの拡充も進めている。

 高麗人参は、吉林省の中でも北朝鮮国境に近い白山市(Baishan)撫松県(Fusong)で主に栽培されている。撫松県の長白山系の気候や地形が、高温多湿を嫌い涼しく乾いた気候を好む高麗人参の栽培に適している。地元では近年、「人参之郷(高麗人参の里)」として観光にも力を入れており、2020年には50万人の観光客が訪れ、4億7000万元(約94億円)の収入があった。高麗人参は吉林省経済の「カンフル剤」の役割を果たしている。(c)東方新報/AFPBB News