【6月19日 AFP】ウクライナ南部ミコライウ(Mykolaiv)近郊で農場を経営するナディーア・イワノワ(Nadiia Ivanova)さん(42)。いつもなら、もうすぐ収穫時を迎えるはずだが、これまでに畑から持ち帰ることができたのは砲弾ばかりだ。 

「一つ残らず回収しなければならず、作付けがとても遅れてしまいました」とAFPに語った。

 ロシア軍は3月、北方への前進を目指し、4000ヘクタールあるイワノワさんの農場を砲撃。その後、20キロほど後退した。

 ロシア軍が去った後の地面は陥没し、穴があちこちに開いていた。命を落としたのは農場で飼っていたクジャクだけだったが、被害はそれだけではなかった。

 ウクライナ産穀物の輸出がストップし、世界的な食糧危機が懸念される中、76人の従業員を雇っているイワノワさんの前には問題が山積している。

 通常なら、年間1万2000トン以上の農作物を欧州・アフリカ・中国に輸出し、国内市場にも出荷していたはずが、倉庫には今、買い手の付いていない昨シーズンの穀物2000トンが積み上げられている。

 ロシア軍の攻撃で線路はあちこちで破壊されている。ミコライウ港はミサイルで狙われ、船は攻撃を受けて沈没する恐れがある。他に迅速な輸送手段はなく、1トン当たりの穀物価格は100ドル(約1万3000円)と、紛争前の3分の1以下にまで急落している。

 イワノワさんの農場にある脱穀機は、すぐには作動しそうにない。いつ爆撃されるか分からない中で、精麦作業を引き受けてくれる専門業者は少ない。農機具も砲撃で破壊されたが、銀行や保険会社の助けを借りるのも容易でない。