■「最期はお気に入りの椅子に座って」

 ドクロリー氏は、末期がんの祖父のために家族が打診した安楽死の求めを拒否したこともある。

「本人は苦しんではいませんでした。見舞いに訪れた孫娘のことや、庭に咲く花について私に話してくれました。自らは死にたがっていなかった。結局は自然に亡くなりました」

 患者の自宅で安楽死の処置を行う際は午後か夕方に訪問し、患者ともう一度、その決断について話し合う。

「話し合いに2時間必要なら、2時間かけます。患者には繰り返し、こう言います。『今日がその日ではないと思うなら、決めるのはあなたです。私が来るのを手配したからといって、必ず処置を施す必要が私にあるわけではないのですよ』」

「ベッドで死ぬ必要はありません。お気に入りの椅子に座って死んでもいい。どこでも、自分が死にたい場所で」

 患者の死後には、親族との対話や葬儀の手続きが行われる。「それぞれが、さまざまな気持ちを表現します」とドクロリー氏。「私にとっては、信頼してくれた家族に感謝を伝える場です」 (c)Francoise MICHEL / AFP