【6月14日 Xinhua News】中国の科学者はこのほど、屋外モニタリングデータと70万サブメートル-メートル級目視観測サンプル、解像度30メートルの衛星リモートセンシングデータを用いて、大規模リモートセンシングによる森林限界の自動抽出法を開発。この技術により、2400キロにわたって続くヒマラヤ山脈の森林限界分布パノラマ画像を作成し、中国の高標高域における生物多様性の保全と管理に科学的基盤を提供した。

 この研究は、中国科学院青蔵高原研究所の汪涛(Wang Tao)研究員らが共同研究者と共に実施した。成果はこのほど、国際的な生態学・進化学のオンライン専門誌「Nature Ecology and Evolution」に掲載された。

 樹木分布の上限高度を意味する森林限界は、高標高域における気候温暖化の指標と考えられている。ヒマラヤ山脈には世界で最も標高の高い森林限界があることから、研究価値が高い。

 研究の結果、ヒマラヤの森林限界の平均標高は3633メートルで、東部地域は西部地域より約800メートル高いことが明らかになった。また、ヒマラヤ東部の大半の森林限界の位置は、成長期の年平均気温が摂氏6・4度となる世界の森林限界の等温線とほぼ一致しており、中・西部では森林限界のほぼ93%がこの等温線以下に分布しているという。

 論文筆頭著者である同研究所の王暁昳(Wang Xiaoyi)博士研究員は「この研究は、干ばつと人間の活動が、ヒマラヤの森林限界の分布を東高西低状態にする駆動メカニズムであることを示唆している」と指摘。今回の研究成果は、地球温暖化に伴うヒマラヤの森林限界の非同期的変化を正確に理解するための新しい理論仮説を提供し、森林限界研究の分野に新しい研究のアイデアとパラダイムを提供すると説明した。

 研究によると、今世紀末にはヒマラヤ東部地域の森林限界が140メートル上昇する一方で、中部と西部では比較的変化が小さく、それぞれ45メートルと6メートルの上昇にとどまるという。また、東部での森林限界上昇により、寒冷な高山地域の固有種の自然生息地が20~70%圧縮され、高標高域に分布する固有種が失われるリスクが高まるとの予測を示している。

 汪涛氏は、高山の生物多様性の保全戦略を最適化し、高山固有種を優先保護範囲に含めること、高標高域の生物多様性の喪失を防ぐための生態回廊を建設することなどを提言している。(c)Xinhua News/AFPBB News